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少年カリオスの冒険の書  作者: 梅雨ゼンセン
第二章 いたずら心に勝るものなし!
14/122

企て -2

 肥大した権力は容易く人を腐敗させる。

 どんな善人でも、権力を振るう快感を覚えてしまえば、脳がその刺激を求めるようになり、やがて理性は自壊する。


 ましてや悪人ならば、崩壊はより早い。


 結果を言うと、三人組の盗賊は女と子供を出せと言ってきた。どこかに売り飛ばす気だろう。


 食べ物だけでは満足できなくなり、ついに一線を超えた要求を彼らはしてきた。


 約束の時間は明日の午前九時。


 夜になり、大人たちは村長の家に集まって話し合っている。ススキの話では夜の遅くまでかかるとのことだ。

 すっかり彼らのことをヴォールの兵士だと信じ切ってしまっている大人たちは、なんとか言い訳をして、他の要求に変えてもらったり、期限を先延ばしにできないか、という方向で議論をしていた。

 彼らの要求を真っ向から断ることをすでにほとんど諦めてしまっているようだった。


 異常な状況。

 たった3人の盗賊に、村全体が洗脳されてしまったかのようだった。



 一方そのころ。

 さて、とアニスは森でカリオスと合流し、作戦を説明し始める。

 そして話し終えると最後に、アニスは魔杖(ワンド)を取り出す。


「じゃあカリオス。準備はいい?」

「いいよ。お願い」


 呪文を詠唱して、杖の先をカリオスの頭に当てる。すると彼の体が現れた魔法陣に包まれていき、外見ががらりと変貌していく。


 漆黒の肌は白くなり、

 闇色の髪は黒色に、

 そして頭の角は影も形もなくなる。


「わぁ……」

「『変化の魔法(トランス)』よ。どう?」


 カリオスは自分の頭を触って、感嘆の声を漏らす。

 アニスは自慢げに胸を張る。


「その反応が見たかったのよ」

「僕の身を守るためじゃないの?」

「どっちもよ。さて、そろそろ来るんじゃないかしら」


 二人のじゃれあいが終わってからしばらくの後、草木をカサカサとかき分ける音がする。


「……待った?」


 現れたのはススキだ。

 そしてその後ろからはずらずらとたくさんの子供たちが出てくる。


 村の子供たちだ。

 全部で三十人ほどいるだろうか。


 彼らには全て事情を説明してある。ただし、アニスとカリオスの素性は隠し、ヴォールにいた旅人ということになっている。


 先頭にいたススキはアニスのところまで来る。


「これで全員だよ」

「ありがと。たいへんだったでしょ?」

「いや、何人かで手分けしたからそんなにかからなかったよ」

「なるほど」


 アニスは一歩前に出ると、全員の顔を見回す。その面々は幼く、体も小さく、一見か弱く見える。

 しかし、アニスを見る目は力強く、大人顔負けである。

 それを見回して、


「みんな、今日やることは分かってる?」


 アニスの問いに、全員が頷く。それを見て、彼女は満足げに笑う。


「よし! ならみんな作業に入りましょ!」


 お~、と小さく掛け声をし、各自作業に移る。

 二班に分け、それぞれカリオスとアニス、ススキを中心に分かれる。


「フフフ……」

「ど、どうしたの? 突然笑いだして? え? 気持ち悪」

「突然辛辣しんらつ!? 引かないでよ!」


 突然笑い出すアニスに、若干引いてしまうカリオス。

 アニスは少し恥ずかしそうに咳払いすると、


「楽しいのよ。こういうの」

「だと思ったけどね」


 そういってカリオスは作業を進める。それに彼女はぶ~っと頬を膨らませる。


「意地悪……」

「それも言うと思ったよ」

「うう〰〰〰ッ!」


 フンッ! とそっぽを向いた後に作業を再開する。


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