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少年カリオスの冒険の書  作者: 梅雨ゼンセン
第二章 いたずら心に勝るものなし!
12/122

村にて -5

 アニスは考えていた。その横にはススキがいる。

 彼女は森でカリオスに出会い、話した内容を全てアニスに話した。


「……そう。ありがとう。ごめんなさい。せっかく聞いてもらったのに」


 彼女は小さくため息を吐く。


「いいよいいよ。それよりも早く良くなってよね。森の彼が言ってた通り、しっかり治した方が良いよ」

「そう……ね。焦って失敗したら元も子もないし」

「そうそう!」


 お言葉に甘えて、とアニスは再び横になる。

 それを見てススキは安心したようで頬を綻ばせる。

 そこにドアが空き、ススキのお母さんが入って来る。手にはお盆があり、茶碗が一つのっている。


「はいこれ」

「これは?」

「母さん特製、薬草粥よ! とってもおいしいんだから!」


 お母さんは茶碗に入った御粥をアニスの横に置き、


「栄養のあるもの取らないとね、治るものも治らないよ」

「すみません。何から何までありがとうございます」

「いいよいいよ。熱いから冷めるまで少し待った方が良いよ」


 と部屋を出ていく。

 ススキは意地悪気に笑い、


「食べさせてあげよっか?」

「自分でできるわよ」

「ふ~ふ~は?」

「からかわないで! もう!」


 アハハハ、と部屋に笑いが咲く。アニスは起き上がり、茶碗を持って股に置く。

 茶碗からは御粥の香りが立ち昇り、アニスの鼻に吸い込まれる。

 香りは薬草の独特の青臭さが少し強い。

 彼女はスプーンでそれをすくい、口に運ぶ。


「おいしい」

「でしょ!」


 自然と手が進む。お腹が空いていたのもあるだろうが、それを省いてもおいしいと感じられる。

 あっという間に完食してしまった。


「ごちそうさま。おいしかったわ」


 その満足気な顔に、ススキは自分の作った料理ではないのに嬉しくなる。


「良かった! 茶碗は私が持って行くから」

「いいわよ。自分で持って行くわ」

「ダ~メ。私が持って行く。アニスはゆっくりしてて」


 ススキは茶碗を取って部屋を出て、隣の部屋にある台所に向かう。

 そこではお母さんが料理に使ったものを洗っていた。


「お母さんこれもお願い」

「はいよ。ススキ。外の洗濯物を取り込んできて」

「はーい」


 と、彼女が外に出ようとしたとき、


「?」


 隣のアニスのいる部屋で物音がした。

 ススキはそれが少し気になったが、気のせいだろうと外に出て洗濯物を取り入れ始める。

 しかしさほど間を開けず、


「ススキちゃんッ!!」

「おじさん?」


 声を掛けられ見ると、見知った顔のおじさんが走ってきた。その様子は慌てていて、ただ事ではないとすぐに察することができた。


「どうしたの!」

「と、とにかく家に入って! あいつらが来たんだ!」


 あいつら。その単語を聞いた途端、ススキは頭にハンマーで殴られたような衝撃を感じる。


「また  食料は出したじゃない!」


 おじさんはススキの背中を押して家の中に入れると、息を整え、


「ススキちゃんは知らなくていいから! とにかく! 絶対家から出ちゃだめだよ!」


 いいね! とおじさんは念を押し、ドアを閉めて去っていく。窓から村の入口を見ると、村人たちが集まっていて、反対側にはヴォールの服を着た男が三人立っていた。

 ここからでは声を聴くことはできないが、雰囲気は伝わって来る。何やら言い争っているみたいだ。


(何を言い争っているんだろう……)


「こらススキ! そんなところにいたら見つかっちまうよ! 早くこっちにきなさい!」


 ススキが窓から様子を見ていると、お母さんは怒り、隣のアニスのいる部屋に行くように指示する。

 外を見たいと思いながらも彼女はそれに従い、隣の部屋に移動する。

 バタンとドアが閉じられる。お母さんは入ってきたとき対応のために隣の部屋に残った。


(また……)


 ススキの心は沈む。つい昨日食べ物を渡したばかりだというのに、今度は何を奪いに来たのか。

 ため息も出なかった。とにかく彼女の安全は確保しなくてはと顔を上げると、




「「……あ」」




 窓に少年がいた。




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