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少年カリオスの冒険の書  作者: 梅雨ゼンセン
第二章 いたずら心に勝るものなし!
11/122

村にて -4

 翌朝。


 カリオスは木の上で凭れて、食事をとっていた。



(アニスは大丈夫かなぁ……)


 ああするしかなかったのだ。自分は魔族であり、村は人間の村。

 こちらから接触するのはマズい。


 あの方法しか思いつかなかったのだ。


 干し肉を噛み千切る力はどこか弱々しい。心ここにあらずというのは自分でも理解している。

 しかし朝食をとりながらも辺りはしっかり警戒する。

 明るく視界は良かったが、それはこちらが発見される確率も上がる。

 村が近い分、警戒は常に解けない。


(一応音が鳴る罠も仕掛けて置いたし、引っかかれば分かる)


 と、カランカランカランッ、と早速罠の鳴る音。そして、


「キャッ! なにこれッ!」


 と短い悲鳴が聞こえる。女の子の声だ。

 カリオスは腰の投げナイフに手をかける。しばらくして、


「カ、カリオスく~ん! どこ~!」


 声が近づいてくる。

 そしてその声は自分の名前を呼んでいる。

 人間でカリオスの名前を知る者はアニスだけだ。しかし声は女の子のものではあるが、アニスのものではない。


 カリオスはしばらく木の上で様子を見ることにする。と、アニスを預けた村の方から、一人の少女が歩いてくるのが見えた。


 見ると、歳は自分と同じくらいで髪は短い栗色。


 少女は「お~い」とカリオスを呼びながら森を歩いている。


「私はススキ。アニスが君のことを探していたよ~! 彼女に連れてくるように言われたの~!」


 見たところ特に武装はしていない。


(どうしよう……)


 彼女がここに来た理由はカリオスを探すため。アニスは自分のことを話したのだろうか。

 カリオスは木の陰に隠れ、


「ねえ!」


 そこから声を掛ける。それに反応し、ススキは声のした方に歩いていく。


「カリオス君なの? 出てきてよ」

「ごめん。ちょっと今は無理なんだ」

「ん、上なの?」


 ススキは声を辿って上を見上げる。視線を向けられたことにカリオスは少しドキッとする。


「姿を見せてよ」


 どうやら姿は見えていないようだ。カリオスはホッと安堵の息を吐く。


「ごめん。このままで話させて」

「でも連れてきてって頼まれたんだけど……」

「ん~。治ったら村を出てって言っておいて」

「それじゃあすぐに治ったとか言い出しちゃうと思うけど」

「そこは……任せてもいい?」

「ん~……」


 ススキはしばらく腕を組んで悩んでいたが、


「まあいいよ。こっちも治ってほしいしね」

「本当に! ありがとう!」

「いいよいいよ。どうせ言えないことなんでしょ。なら無理には聞かないわ」

「ありがとう」


 そういうと彼女はきびすを返し、「骨折り損、かな」と村に帰っていった。

 それを見送り、見えなくなると、カリオスは木から降り、安堵の息を漏らす。


 これで良かった。カリオスよりも、村の方が良い手当を受けられるに決まっている。今自分にできることはない。


「今日の食料を探すか……」


 森を歩き、今日の分の食べ物を探す。

 野草は魔郷のものとあまり変わらない。分からないものは口に含んでみればわかる。


「これは……うえッ! ペペペッ!」


 と、食べられそうな野草を探していると、


「ん、ここは……」


 獣道の近く来ていた。

 そこでカリオスは思い付く。


(アニスがいない間、ここで見張りをしていよう)


 またいつ兵士たちがやって来るか分からない。

 その時、真っ先に伝えられるようにここで見張りをしよう。

 カリオスは仕掛けてあった音の鳴る罠を解き、待機場所を獣道がギリギリ見えるところに変える。


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