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スパローと言う少女

私が軽く踏み出したその足の動きを、装騎が素早く増幅し、大きな一歩を踏み出す。

コクピット内で騎使が行った小さな動きをモーションマネージャで感知。

その動きを増幅し、装騎で再現するオーバーシンクロナイズと言う技術。

その技術により、私の着込んだ鎧が動き出す。

PS-34――ハイマットそれが私の乗っている装騎の名称。

やや無骨ながら、基本的にはスラリとしたデザインのマルクト共和国の国軍で正式採用されている中装騎。

走攻守全てにバランス良く長けており、信頼性が高く、自国内だけではなく他国からも一定の支持を受けている機甲装騎だ。

輸出用モデルは勿論、コピー装騎も多く出回っているとか。

「ウェーブナイフ――――」

私は腰部のストックに保持されている超振動型のナイフを両手に持ち――構えた。

「今度の候補生はナイフだけでかかってくるみたいね――」

「まぁ、重武装にするよりは軽装にして逃げに徹した方が良いしね」

建物の瓦礫を盾にしながら、此方の様子を伺っていたノートレスのそんな会話が私の方にも聞こえてくる。

どうやらこの試験では敵役のノートレス四騎と、私の装騎の通信回線がオープンになっているようだ。

相手をするのは私より一つ上の先輩方。

先輩方は私が逃げに徹する――――そう思っているみたいだ。

「とりあえず、隠れてる候補生――炙りだしちゃおうよ!」

無線から聞こえるそんな言葉と共に、一騎のノートレスが開けた一角にその姿を見せた。

そして、その手に持った12mmバーストライフルの銃口を私が隠れている建物の残骸へと向けると――フルオートで発射した。

タタタタタタタ

ノートレスの手にした12mmバーストライフルから青白い電流と共に銃弾が迸る。

その銃撃は、コンクリート製の残骸などいとも容易く貫きながら私を追いかける。

私は、その銃撃を潜り抜けると、建物の残骸――その陰から身を晒すと

「行きます――!」

12mmバーストライフルを連射する装騎ノートレスへと一気に肉薄した。

「えっ!?」

相手が候補生だと油断をしていたのだろう――――その距離はあっと言う間に縮まり、対して相手の装騎は驚きに身を硬直させる。

「これで一騎」

私の閃かせたナイフの一撃が、一体目のノートレスを機能停止にさせた。

「次――――っ」

次に私は、その直線状の建物の影に隠れているノートレス向かって装騎を走らせる。

「――――あっ! 撃て! 撃て撃てぇ!!」

我に返ったように、リーダー各と思しき先輩の声が無線を通じて聞こえてくる。

それに従うように、3方向から12mmの弾丸が私に向かって斉射された。

「なるほど――――」

私は独り言ちながらも、銃弾の雨を突っ切る。

最初の私の一撃で、先輩達はかなり動揺しているようだった。

そんな、迷いのあるような攻撃なら私には――――

「当たらない」

「うわぁぁぁああああ!!??」

私は装騎を飛び跳ねさせると、相手のノートレスの頭上を跳び越える。

そしてそのまま、衝撃を上手く殺すように着地をしながら――ナイフで二騎目のノートレスを撃破した。

「おい、今アイツ装騎で跳んだぞ!!??」

「あんな事したら脚へのダメージがタダじゃ――――きゃあっ!?」

タタタタタタ

私は撃破したノートレスから12mmバーストライフルを奪い取ると、その銃弾をさらにもう一騎のノートレスへと叩き込んだ。

ガガガガガガガガ

フルオートで放たれた弾丸が、どんどんノートレスの装甲を歪めていく。

表面に傷が走り、へこみ、ひしゃげ、装甲が剥ぎ取られるとそのフレームを撃ち抜き、ノートレスの機能を停止させる。

「バカな――――!」

「残り一騎――――」

フルオートでの射撃で一気に銃弾を叩き込んだ為、12mmバーストライフルは早くも弾切れ。

私は12mmバーストライフルを投げ捨てると、再びナイフを構えて最後の一騎へと装騎を駈ける。

「く――くそう!! こうなったら……」

最後のノートレスは、左手に12mmバーストライフルを構えると、空いた右手にウェーブブレードを握った。

ウェーブブレードは、私が愛用しているウェーブナイフと同じ超振動型の武器で、ウェーブナイフの長身バージョンと言えるだろう。

そうくると、ライフルで牽制しながら、ブレードの一撃での私の撃破を狙っているのかもしれない。

だけど――――

ピチャン――――

装騎の体に小さな水滴が張り付く。

ピチャン――ピチャン――――

その数は次第に多くなっていく。

雨が降ってきたんだ――――。

「いっけぇぇぇえええええ!!!」

ノートレスが12mmバーストライフルの引き金に指をかけたその瞬間――――

バリバリィッ!!!!

12mmバーストライフルが激しく発光し、その輝きはライフルだけではなく、装騎の左腕まで侵蝕する。

「銃器は雨天時に使用するとショートする――フルオートでの使用なんて以ての外――基本中の基本ですよ」

左腕を焦がしその衝撃で動転する最後のノートレスに向かって、私は、ナイフを突き立てた。

「最終試験終了! スパロー――――君のシュテルネリーベ女学園への入学を歓迎する」

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