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溺愛されし彼の人  作者: 椿ノ華
第二章
7/10

7  実感する異世界フェルアーダ

 リーヴェマールとフェルアーダと別れ、再び目を覚ましたのは新しい人生が始まって6年後だった。


 最初は非常に戸惑ったが、両親の惜しみない愛情と根気強さに助けられ、どうにかこうにか生活に慣れたきた今日このごろ。

 あたしの新しい名前はユリハ・ロルトフェナ(西洋と同じ名乗り方が一般的。だから名前はユリハ。家名はロルトフェナ)。両親は美女と野獣のような二人。

 最初に見た時の美人さんとは違う別の意味で美形な両親。

 そしてナント、あの有名なエルフ族や古エルフ族(俗に言うハイエルフ族)、背中に純白の翼を持つ有翼族ゆうよくぞく等がいるらしい。そしてびっくりすることにあたしは人間族ではなく天狼族てんろうぞくという種族に生まれたことだった。話では聞いていたけど、実際見るのとでは大違いだった。だって、男でも女でもない微妙な身体だから。


 天狼族てんろうぞくというのは、狼(狼よりもふた周り大きく、鋭い爪と牙、鋼のような毛皮を持つ)の様な獣の姿と人間の姿、両方を持つ長寿の種族らしい。なんでも神獣として存在していた歴史を持つとかもたないとか。あまりにも古いのではっきりとしたことは分からないらしい。中でも両方の姿を持つ天狼族はめったに生まれないらしい。過去十数人しか見つからなかったとか言われている。

あたしもまだ一度も獣の姿になったことはない。いつか獣の姿に成れたらいいなと思う。


 ふわふわのモコモコ………いいかもしれない。


 天狼族の最大の特徴が性別を持って生まれないといううこと。性別は生涯の伴侶を見付けた瞬間に決まるらしい。それまでは男の子でも女の子でもない。中途半端な性別なのだとか。どっちの服を着るにしても抵抗がないのは嬉しい誤算かもしれない。生前はパンツやデニムを着たり、ミニスカはめったに穿かなかったけど、ワンピやロングは着たりしていたからね。


「ユリハ、ご飯」

 野太い声が部屋中に響くのは父であるレジェス・ロルトフェナ。 父。山男よろしくと言わんばかりな筋肉隆々な野獣のような顔なのにどことなしか美形という言葉が入るが心優しい父。家事一切出来ない母の代わりに父が家事や育児をしている。顔に似合わず子煩悩な父である。あたしはそんな父が大好きだったりする。

「ユリハ、一緒に食べましょう」

 父の背後から現れたのは、母のレニス・メアード・フェリスティン。山とは無縁で深窓の姫が良く似合う美少女。いつか見た銀髪の美女さんに良く似た人。その人の事を聞くと、かなり悲しそうな顔をするので、詳しいことは聞けなかったけど血縁者だと思う。

「は~い」

 何もない場所だけど、家族3人で暮らしていくには楽園のような場所だった。

 今あたしが生活をしている場所は、深い山々の開けた場所に2階建ての山小屋が生活拠点になっている。山小屋の前は一面鮮やかな緑色の草の絨毯が広がり、背中には山頂に雪を残した高い山がいくつも連なっている。山小屋を出て左側へ歩いて5分くらいの所には山の麓まで続く森。反対側には、底まで見える湖のような湧き水は美味しいし、近くの森には果物やキノコなど沢山ある。

 まるで某アニメの少女如く、リアル山暮らしを堪能している。

 電気が無く不便ではあるが、魔法が使える両親のおかげで便利な日常を過ごしている。

 何故、このような場所で暮らしているかというと、そこには大きな理由がある。

 それはあたしがいる場所は季節関係なくいろんな物が顔を出す…らしい。

 お母さま曰く「神の寵愛を受けすぎて、都会で暮らせない」らしい。

 神の寵愛で思い出すのは、あの二人だ。

 リーヴェマールと世界の意志のフェルアーダ。

 あの二人の惜しみない寵愛と恩恵の結果、草木も生えぬ荒野が一夜にして草原へと変貌し尚且つ沼と湿地帯は見違えるほどの透き通る湧き水が湧き出した、

 そんな場所がいつくかあるらしい。

 何でも、ここに辿り着くまで、それを繰り返してきたらしい。

 神の寵愛を受けし赤子として、精霊たちの溺愛が凄くて転々と旅してこの場所にたどり着いたらしい。

 ……らしい、らしい、らしいって、すべて両親から聞いたことだったりする。何でも、原因不明の眠りに付いたまま、この山奥までやって来たらしいのだ。その原因不明の眠りは「神々の寵愛」と「精霊たちの恩賞」らしい。

 詳しいことはまだ分からないが、あたしが異質であることは、はっきり分かった。これ以上ないってくらい異常だよ、これは。


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