3 つかの間の再会
ここまで読んでくださりありがとうございます。
つたいない文才ですが、楽しんで頂けたら幸いです。
「ごめんなさい」
か細い声が頭に響く。
「ゆり」
どこかで聞いた事のある声。
どこだった?
そうだ……
よく夢に見る子…リーヴェマールの声だ。最初は浮遊の未練がある幽霊少女かと思っていたけど、普通の幽霊とは違っってどこか生身のある人間のような気がした不思議な子。幼女の姿なのにどこか大人びたアンバランスな子。
毎晩夢の中でたわいのない話をしたり、おとぎ話が好きだと言っては何度も同じ物語を話したりしていた事を思い出す。
「無理に起きないで。そのまま聞いていて」
百合の現状を理解し、眠りを妨げないように子守唄のように囁くように語りだした。
「魂が戻る世界を離れてしまってごめんなさい。
わたしが悲しみ嘆いたからェルアーダはゆりの意志を無視して喚んで、無理矢理転生させたの。
わたしは"***の女神"と呼ばれているの。
世界が出来た時、最初の"人"として生まれ、フェルアーダの伴侶として存在を許されたの。
だけど長い時間が経つにつれ、新しい神や女神が生まれるにつれ、人々に忘れ去られていったの。人々の記憶から消えた神々は神力を失い、存在を無へと変わる。これは世界が誕生したときの制約の一つなんだけどね。
話がそれちゃった…けど、夫であり、世界の意志であるフェルアーダの想いだけでは、わたしを留めることは出来なかった。忘れ去られた神はいつかは終焉を迎える。それは人でいう安息の日と同じ。違うのは、二度と生まれてくることはないの。永遠の安息。その日をただ待つ日々だったわたしをゆりだけは見付けてくれた。
世界を越えてわたしの声を、存在を、温もりを見付けてくれた。
何も言わないわたしを『ともだち』だっていってくれた。
嬉しかったの。
嬉しくて、嬉しくて、初めて喜びの涙を流したの。そしたらね、世界が変わって見えてきた。
ゆり以外の人々の声が聞こえるようになった。まだわたしの存在は忘れ去られたままだけど、世界に希望が望めたの。小さな希望がいつか大きくなるかもしれない、と思えるようになったの。
全てはゆりのおかげ。
ゆりがいてくれたから、わたしは再び色んなモノを見つけることが出来たの。
わたしの全てはゆりそのものになっていったわ。
世界は違えど、干渉は出来なくても、生きている事実があればよかった。
だけど、ゆりの命が消えてしまうと思うと……悲しみで心が潰れそうになる。
ゆりが居ないと思うと…わたしには絶望しか残されていないと感じてしまう。
わたしの深い悲しみと絶望が、フェルアーダの動く理由になったの。
……ごめんんさい、ゆり……
でも、また会えると思うと嬉しさを隠せないの。
わたしが要る世界で、わたしの溺愛と寵愛、恩恵と加護、世界の寵愛を受けし女神の愛子として生まれる事が嬉しいの。わたしの愛子として成長を助け見守り関与することが出来て嬉しい。
健やかな日々を、平穏な日々を、絶望のない日々を、誓約するわ。
ねぇ…ゆり……いつか、逢いに来て。
ずっと待っているから。
神々が住まう庭へ」
『………約束するわ。リーヴェマール。だってあたし達は『ともだち』でしょ?』
ゆりがそう答えると、花が咲き誇るかのように鮮やかな微笑みを返した。薄れゆく意識の中リーヴェマールの「誓約よ」と呟いたのが聞こえた。