2 強制的に拉致?
ふわふわと漂う波の上に寝ているような感覚。もう少しこのままで居たいような気もしたが、なぜか無性に起きなければならない様な気がした。
目覚めるとそこは何も無い場所。場所というよりも空間と言った方がしっくりくる。
明るくもない。でも、暗くもない。不思議な場所。
目覚める前との違和感を覚え、記憶を辿り初めてみた。
名前は根元 百合25歳。ごく普通の会社員。容姿平々凡々、どこにでもいそうな20代半ばの女。彼氏とは2ヶ月前に別れた。理由は簡単彼の浮気。それも結構仲が良かった同じ部署の後輩。彼女は妊娠3ヶ月らしい。バッタリ二人がデートしている所に鉢合わせして、修羅場になる前にケリを付けた。というよりも、急に冷めてしまった。見る目が無いと反省しながら過ごした2ヶ月間。繁盛期だったため、失恋解消とストレス発散する暇が無く時間だけが過ぎていたが、今日飲み会を通して解消発散するつもりだった。
そうだ、さっきまでオフィス街にいて同僚たちと今夜の飲み会の話で盛り上がっていた。絶対定時で終わって、速攻飲み会。明日は有給とったから朝まで飲む!!と意気込んでいた所を何かが来て、認識する前に意識を無くしてしまった。
臆測で言えば、何かが来たのは車かバイクのはず。車道の側を歩いていたんだし。認識出来ずに意識を失ったってことは……
「死んだか意識不明の重体?」
思わず声に出てしまった。
耳から入った言葉に不安が体中に広がった。不安から恐怖へと変わろうとした時「ゆり」と自分の名前を呼ぶ声で周りを見渡せることが出来た。
目の前に美丈夫がいた。
光り輝く銀色の長い髪、大海を思わせる紺碧色の瞳。端正な顔には無表情に近い感情が有り、長身で手足が長い。着ている物は、着流しのような着物のようなものだった。どこをとっても現実ではありえない程の出来事続きに混乱していた百合は、ポカンとした表情のまま美丈夫を眺めていた。
「私はフェルアーダ。この世界の創造主」
美丈夫は淡々と言葉を紡いた。すべてを説明する訳ではなく、簡単で面倒くさそうに声を発していた。
「簡単にいえば、世界の意志」
益々持って訳が分からない。百合の理解を求める様子でもなく、説明するだけの世界の意志こと創造主フェルアーダは、現状を言う。それは百合の不安を解くことを求めていない。フェルアーダが求めるのは最愛の人であるリーヴェマールの心の安寧。
彼女が求めるのならば、百合個人の意志など関係ない。強引で無理矢理にすべて望むがまま全うする。そうしないのは、やはりリーヴェマールのためだけだった。
「お前を私の世界へ誘う。リーヴェマールの寵愛を受け、心を開いている。だから私も寵愛を授けよう。新たな肉体と新しい人生。命の始まりを与えよう。稀にみる神の愛し娘、ゆり」
そこで百合は、事の自体を理解始めていた。
「ちょ…ちょっと待って下さい」
「さぁ、眠れ。魂の安寧はすぐに終わる。再び瞼を開ければ、始まりの日だ」
フェルアーダの話が終わると同時に百合は意識が遠のくのが分かった。いくら意識をしっかり保とうとしても外から強制的に意識を奪われる感覚が強く自分ではどうしようもなかった。そして身体から力が抜け「倒れる」のが分かったのを最後に意識を無くした。
次話は出来しだいUPします。