1 大切なもの
初投稿で初小説です。
至らない所や読みにくい所もあるかと思いますが、広い心でご覧下さい。
暇つぶしに軽くご覧頂くと嬉しいです。
リーヴェマールは暗く何もない場所で、いつものように彼女を見つめていた。
彼女と話すには、時が重ならなければならない。今はその時ではなかった。
リーヴェマールは一人で飽きることなく見つめていた。そこへ姿を見せたのは、創造主であり、世界自身でもあるフェルアーダ。
リーヴェマールの夫にして、唯一無二の存在。
「また見てるのか?」
「…………」
「飽きないのか?」
「…………」
一心不乱に彼女を見つめるリーヴェマールにフェルアーダは苦笑するしかなかった。彼女に対して嫉妬や妬みなどの感情を持ち合わせていない。
最愛であり、半身であるリーヴェマールを見つけ出し心を癒した存在の彼女。自分では成しえなかった。
存在が余りにも大きく異質だった故に一人孤独を強いられたリーヴェマール。人々からも他の神々からさえ存在を忘れ去られてしまった。そのために姿を幼女へと変えた。
リーヴェマールとフェルアーダは彼女を見つめた。
彼女は昼食を終え、同僚と楽しそうに歩いていた。
オフィス街をゆっくりと行き、たわいのない話を楽しんでいた。
その様子にリーヴァマールは自分のことの様に楽しそうに微笑んでいた。リーヴェマールが楽しそうにすれば、フェルアーダも自然と楽しくなる。
二人の間に流れる優しい時間を満喫していたが、突然終わりが訪れた。
彼女に向かってトラックが向かって行った。
すべては一瞬の出来事だった。
彼女達に向かって行ったトラックは、ハンドル操作を誤りショーウィンドへ激突した。ショーウィンドの前を通っていた彼女達を含め数人が巻き込まれた。
周りが慌ただしく動く中、事故が起こった場所には真新しい血溜まりが出来始めていた。それは、命の灯火が少なくなっていることを物語っていた。
一部始終を見ていたリーヴェマールは発狂し出すかのように絶叫した。傍にいたフェルアーダはリーヴェマールを抱き締めるが、治まらない。
リーヴェマールが唯一孤独を埋めた存在が、いなくなる。それは、リーヴェマールが狂い始めることを物語る。一人で耐えていた時間を考えれば、狂い始めなかったことが奇跡に近いことだった。
リーヴェマールの絶叫と共に辺には神の力が溢れ出始めていた。
「落ち着け、リーヴェマール」
絶叫し錯乱しているリーヴェマールには、何も聞こえないでいた。
ただ悲しみだけが身体中に溢れ、涙がとめどなく流れていた。
世界が違えど、命ある者はいつかは安息の日を手に入れる。そうだと分かっていても彼女の安息の日はまだ先で、いつでも会えると思っていたのだ。それだけが楽しみだったリーヴェマールの悲しみは深い。
フェルアーダは、苦肉の策として強引に眠らせた。
「ゆ………り………」
意識を失う寸前まで、リーヴェマールの心を占めるのは、彼女の事だけ。
フェルアーダはリーヴェマールを抱き締めると、ある決断をした。
「…望むのならば…」