花畑で会いましょう。①
初夏――
GWに悠人と六花は再び英国に来ていた。
ロンドンまではアーネスト達と一緒で、そこからはレンタカーである。ランズエンドまで長距離移動し、周りが花畑の小高い丘にやってきた。
「すーっごーい!白いお花が、一杯だね」
無邪気に笑う六花を目を細めて見つめる、手折る事はないが身を屈めて花の香りを嗅いでいる。
「この辺りの丘は、フィーの所有している土地でね。この間のアロマオイルも、この畑から収穫しているんだよ。」
「すごーい、アロマオイルってね凄く沢山のお花から、ちょびっとしか採れないの。」
手を差し伸ばせば、白くてほっそりした手としっかりとした腕が伸びて来て指を絡ませて、六花を引き寄せる。
「もう少し歩くと、フィーの家だからね」
「お土産もあるし、楽しみだね?」
ニコニコと笑う、太陽のような笑みが悠人に向かい釣られて笑う。
「お、来たな」
金髪の背の高い男性が、2人を見て手を振る。
「ひーさーしーぶーりー」
「やめい、子供みたいじゃないの」
フィーに言われ、首をすくめるが懲りた様子は無い。
「久しぶりディック、この間はありがとうフィー」
フィーは顔見知りなので、六花は挨拶をして隣の男性を見る。フィーと同じ位の、若い男性だ。
「旦那のディック」
「やぁ聞いた通り、スノーホワイトだね。よろしく、ディックだよ」
家に招かれ、外観よりうんと広い部屋であちこちに干されている花を興味深く六花は見つめる。
「六花はアロマが興味あるんだって?フィーがまた沢山煮ていたよ」
「そう、作ったから沢山持って帰って。そうそう来れる距離じゃないから、うんと作ったよ」
その言葉を聞いて、六花は満面の笑みで頷く。六花が嬉しそうに話を聞くのでフィーも嬉しいのだろう、あれやこれやと話題を提供し仕舞いには貯蔵庫に連れて行ってしまう。
「フィ…大喜びだな」
「同じ趣味だから、盛り上がるんですよね」
ディックがチェス盤を取り出し、悠人が駒を並べる。男性は女性の趣味には、口出しをしない…これが鉄則なのだ。
「こんなにもらっちゃって、本当にいいんですか?」
「持っていけ~、むしろ持って行ってくれないと、私達2人じゃ消費するのに何年かかるか」
ディックの言葉に、フィーも笑って頷く。六花が持参したのは、和スイーツだ。抹茶やあんこを使った洋菓子で、ディックもフィーも驚きながら食べていたので大満足だ。3時間程滞在し、近くの大きな駅にレンタカーを返してそこのロータリーで、ダウェル家の車に乗り換える。
高速と一般道を乗り継ぎながら、のどかな風景を見れば稀に行き先を書いた看板を持つ人が立っている。
「ヒッチハイク?」
「うん?…あぁそうだよ、たまにダウェル領内でキャンプしている人間もいるよ?」
「最近は、お嬢様位の年齢でヒッチハイクしている方もいますよ。私達は規則で乗せませんが、危ないですね」
運転手のピーターがハンドルを持ちながら、しみじみと頷きながら言う。直訳はできないが、カタコトの英語を拾って翻訳し六花も頷く。
ダウェル家に到着したのは夜遅く、途中で3人で食事してきたのでそのままいつもの客室を使い、悠人と六花は深い眠りに就いた。




