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櫻の樹の下で  作者: 赤司 恭
櫻の樹の下で、君と出会った。
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想ヒ人 終。

想ヒ人のシリーズは、この話で終了デス。

「ひま…」


土曜日出勤の本日、午前中は足の治療で病院に行く悠人。最近はもう松葉杖も不要で、普通に生活をしているのだが診察日にはちゃんと出向いて行かないと、今後の事で響くかも知れない。

怪我したのが10月、あれから5カ月が経過し3月も半ばになっていた。


「六花ちゃーん」


ノックなしで顔を出したのは、仲良しの総務課市田だ。


「さとこちゃん!入って~、今病院行ってるし」


ヒョコヒョコ入って来て、ちんまりとソファに座る。


「これね、昨日焼いたクッキーなんだ。一緒に食べよ?」


「やったー!んじゃね、下のカフェオリジナルの茶葉があるから、一緒に飲もうね♪」




会長室こっちも暇なの?」


「あ・美味しい! うん、基本的に他の会社って土曜休みが多いでしょ?ほとんど座っているだけなのねぇ。」


土曜休みにすればいいのに…と、市田の言葉に六花も同意しながら手焼きのクッキーを摘まむ。


「この紅茶美味しいね!」


「でしょ?ヴィが気に入って買ってるの。」


「さすが紅茶の国の民!んで、紅茶の民は?」


「病院、アキレス君の様子見みたいだよぉ」


悠人がアキレス腱を切ったのは、社内外的にも「交通事故」として処理されている。真実を知るのは、英国の家に行った事のある人間のみ。最上階のフロアをリハビリ代わりにウロウロしたり、持ち込んだミニ自転車で走り回って周囲を心配させたのは先日までの話だ。





「ん?お茶会か?」


「お帰り―」


「お邪魔しています!」


土曜は死ぬほど暇だと悠人は理解しているので、自分の仕事が終われば「お茶会」を開くのを容認している。


「んでどうだったの?アキレス君のご機嫌は?」


「完治、スポーツに復活OK。漸く組み手して指導ができるよ」


お茶を入れようとして立ちあがった六花の、両脇に手を差し入れて持ち上げる。きゃあきゃあ言う六花に、それを楽しそうに見上げる市田。市田に見られて真っ赤になり、慌てて給湯室に行く姿を嬉しそうに見送る。


「良かったですね、完治して。ここのフロアで、リハビリしていたって社内で噂ですよ?」


クスクス笑う市田に、悠人も苦笑を禁じ得ない。


「リハビリ、そうでもしないと時間取れないしね。やっぱり健康一番だよ。」


ふふ…と笑って市田を見るが、顔が真っ赤で俯いている。何か気を悪くしたか?と悠人が聞くが、違うと首をふる。


「お待たせ…、どうしたの?さとこちゃん?」


「話していたら、顔赤くなってきた」


何故だ?と、首をコテンと傾げるその仕草で市田の顔は熟れたトマトのよう…。


「あー…分かった、ヴィってば目見て喋るでしょう?さとこちゃんは、女子高育ちもあって恥ずかしがり屋さんなの。」


「そうなんだ?ごめんね」


そう言いつつ、身をかがめて下から市田を覗きこめば、やや白くなりそうだった顔色が、再び赤くなる。


「意識しちゃうと、紅白点滅みたいに顔色変わっちゃうから。んもーヴィあっちの席に行って~」


はいはい…と、お茶を持って自席に戻り慌てて謝る市田を、ニヤニヤと見る。


「悪ぅ~い顔してるよ?」


「してる?」



週明け、市田はレオンとアーネストにからまれ、顔を紅白に変えて恥ずかしがる光景を周囲に見られる事になる。


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