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櫻の樹の下で  作者: 赤司 恭
櫻の樹の下で、君と出会った。
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想ヒ人⑤

ダウェル家には、私兵がいる。蒼太はその半分を動かし、ブロデリック家に向かわせ警察にも拉致監禁で届け出をして同時に動くよう依頼をした。


古くからあるダウェル家は、領主であり警察組織も実際の所、ダウェル家の圧力にはNOと言えないのだ。この100年少しで出来た、いわば新参者のブロデリック家は格下の家柄でありキレた蒼太の圧力にあっさりと二女コーデリアが普段から使う別邸の、詳細な見取り図と警備の配置をFAXしてきた。

今現在起こっている事をブロデリック当主に伝えれば、おかしい程に取り乱しロンドンの本邸からただちに向かうとの事。恐らく同時着位になるだろう。






暖かい手が、頬に触れる。髪を触り頬を撫でるとその手は顎に移って、顔を上げ唇に重なりヌルリと舌が入って舐めとるように何度も唇を重ねる。


やがてその感触は、チリチリと痛みを伴いながら首筋から胸へと落ちて行く。


はっと目を覚ますと胸の部分には、プラチナブロンド見下ろしたソレは顔を上げるとニィと嗤う。


「触るな、近寄るな」


チリと胸に痛みが走り、赤い花が咲く。付けた本人――コーデリアは、嬉しそうに顔を悠人に近づける。


「っきゃ」


バチッと何かを弾き、コーデリアは後ろ向きに転ぶ。

足が動かない今、ソファの側面にもたれ掛り、少し寝ていた所をコーデリアに襲われた…所か。

吐き気が止まらない、こんな女にされるならマッチョな野郎とキスした方がマシだと、内心毒づく。

体力も気力も限界に近い、コーデリアとダレルは交互にやってきて色仕掛けと説得と軽い暴力で、協力を仰ぐのだ。


廊下にも絨毯が敷いてあるため、足音が聞こえない。うつらうつらした今、フイを突かれてこのざまだ。サイキックは気力に比例する、勿論体力にもだ。


今は限界に近い、せいぜいコーデリアを弾くのが関の山だ。暴行を受けた時に内臓も少しやられたろうし足の傷口から出血が止まらない、ジクジクとゆっくり血が出ているのが分かる。


気を取り直したのかコーデリアはブツブツ言いながら立ち上がり、部屋から出て行く。





「ここか!」


警察が突破しようとしている中、蒼太とレオンとアーネストがブザーを鳴らす。無理やり入ればこちらも罪になりかねない。


警察が事情を説明し、出て来た黒毛の若者に拉致監禁の容疑が出ているのを説明した所で、さっと顔色が変わった。身を翻し「逃げてくださいませ」と叫ぶ後ろを追う。奥へ奥へ途中の警備は、私兵が相手をし3人は端から部屋を開けて探して行く。



「いたっ!ヴィ大丈夫か?」


ソファの側面に身を預けるようにもたれ掛り、放りだした足の間にある両腕は拘束具で固定されている。ジャケットは着ていたが、中のシャツはほぼ開けられており赤い後が点々と首筋から胸まで続いていた。目はうつろで、唇やその周りは口紅が付いている。


「ヴィ、ヴィ!しっかりして!もう大丈夫、助けにきたよ!」


両手首からは拘束具で擦れて血が滲み、レオンとアーネストが両脇を抱えて立ち上がらせると、クニャリと崩れる。その際多量に黒い血を吐く。


「レオン、アーネスト?…六花」


コクコクと頷く、レオンが悠人を背負う。


「蒼太も近くに居るな、フィーも来ている。」


「もう喋るなヴィ、救急車も呼んだからな」


追いついた蒼太が、フィーがなんとも言えない顔をする。


「痛いだろう、拘束具だけでも外してやる」


鍵が有るべきところに手を当て、何事か短く言えばバキンと外れて床に落ちる。


「ありがとう、実は内臓とアキレス腱もやられてるけど?」


「それは医者に言え」


口だけ笑みの形を取り、やがて目を閉じて意識を失った。


兄ちゃん色々ダメージ多し。


8/2修正

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