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櫻の樹の下で  作者: 赤司 恭
櫻の樹の下で、君と出会った。
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想ヒ人②

目を開けると見知らぬ部屋、吐き気に頭痛にめまいのトリプルアタック。眉をしかめて身を起こせば、ソファにいるようだった。


窓は鍵がしており、ガラス越しに見える暗い風景には見覚えがあり、そう言えばあの若者も見覚えがある。


「おや、起きられました?」


若者が入ってきた、先ほどまでの事はまるで夢のような顔でニッコリと笑う。


「和奈城さま、手荒い招待になりまして申し訳ありません。」


日本での名前を知っている事に、悠人は軽く目を見張る。


「実は私ども研究所をしておりまして。御存じですか?ウィスモラー研究所と言います。貴方様のサイ能力を、どうか私どもの研究にご協力お願いしたいのですが?」


ウィスモラー…会合でもフィーの話でもチラホラと出てくる研究所だ、いかがわしい研究をしていると聞いていて、実際サンプル協力した人間がそのまま連絡が付かなくなったり、消息不明になっているのも耳にしている。


「断る、僕は自分で協力先を選ぶ。君達の事はある程度知っているが、協力するのは遠慮させて貰うよ。」


「困りましたね、私どもと致しても貴方様程の方を手放すのは惜しい。ダウェル家は、貴方を厳重に保護しているしなかなか接触できないですからね。」


協力の言葉を聞くまでは、解放出来ませんので…と残し、若者は部屋を出て行った。




何時間経過しただろうか?気が付けば窓の外は明るく、外を見ればやはり覚えがある。バーニングダムだ、意外と街中にある建物だと推測できる。


カラカラと音がして、部屋の前で止まり振り返れば昨日の若者がワゴンを押して朝食を運んできたところだ。


「朝食です、どうぞ召し上がってください。勿論毒なんて無粋なものは入っていませんので、ご安心ください。」


「君の名前は?」


「聞いてどうするんです?」


「話しかけるのに、名前が無いと話しづらいだろう?」


「…ダレルです、協力する気になりましたらいつでもお呼びくださいね。扉の前で、お待ちしています」


朝食のワゴンには水差しがあった、大きな水差しに並々と入ったソレを片手に右手を少し濡らす。

家庭用の扉だ、厚さは知れている。いつかの夏にしたようにドザノブの真下に手を当て、PKを発動させる。



ドンドン!!


直ぐに手を濡らし、衝撃で吹っ飛ばされたダレルを見つけると首に手を当て同じように、PKを発動させて走る。


途中で外に出る扉を見つけ飛び出せば広大な庭、「チッ」と舌打ちをした走り抜けるがあっと言う間に警護の人間が集まって来て、取り押さえられる。



「まぁ、ダウェルの血縁ともあろう方が、脱走なんて」


鈴を転がすような声が聞こえ、目だけで見るとプラチナブロンド。

ダレルの言う主人だろう、人物名鑑を頭の中で検索する。


「ブロデリックのお嬢様か」


「まぁ、覚えてらっしゃいますの?光栄ですわ」


コロコロと笑い声が聞こえ、ようやくダレルがやってきた。


「申し訳ありません、力でやられました。」


「いいのよダレル、この方はそれでも手加減を凄くされたと思うの。でも、駄目ですわ逃げちゃ…貴方達逃げない様にすこーしだけ、ね?」


小首を傾げて笑い、悠人を押えていた人間が一瞬体から手を離したかと思うと、腕や腹や足に衝撃がどんどん加わる。


「顔は駄目よ?私この方の顔が、大好きなの。それに脳に衝撃を与えちゃあ、サイキックが消えるかもしれないわ?殺したくはないけど、気が変わる位にね?」


両手をひとまとめに拘束具を付けられ、気を失うほどに暴行を受けた。

その様子を、ブロデリックのお嬢様は可愛らしく笑いながら、目をそらさず最後まで見ていた。


お嬢様、肝座ってます…。

バーニングダム→英国のロンドン近く、第二の都市。

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