ちいさきもの。
カタンと微かに音がして、六花は目が覚めた。
顔をあげると隣にいたはずの悠人がいなくて、音のした方向を見ると悠人が歩いてくるところだった。
「おはよ、体の調子は?」
「おはよう、ばっちりよ」
ベットに腰かけた反動で、よろけた六花を悠人が抱き寄せる。
「ちょっとじっとしてて…」
鎖骨に何かあたる感触がして、髪がふわっと持ち上がる。いいよとの言葉に、鏡で見ると小さな小さなリングがネックレスに通してあった。
「わぁ、ちいさーい!可愛い」
鏡越しに、後ろに立つ悠人に微笑むと小さなリングをつまんで見せてくれた。
「青とグリーン?ヴィンセントの目の色だね」
「そう、ちゃんとした指輪は今度買ってあげるけど、それまでこれ付けててくれる?僕が生まれたときに、両親が作ってくれたベビーリング。」
「ええ?!そんなの…凄く大事なものなのに?いいの?」
「僕が持っていても、仕舞ってあるだけだし六花さえ良ければね?」
コクコク頷き、ありがとうと抱きつく。
2日目は、午前中に少し練習をして敷地内の隅にある小さな竹林で、竹馬を作ったり筍があれば掘ってみようの日らしい。のこぎり片手に、蒼太や悠人が子供たちに竹馬を作り、小ぶりながら筍が10個採れたので、離れの台所で筍ごはんを作る女性陣。
「せんせいの家、おもしろいねー」
「竹馬、持って帰っていいかな」
レオンが、一番面倒を見ていた最年少の男の子が、おやつの時間に竹馬に乗れるようになり大喜びだ。
「ゴールデンウィークに、お邪魔してすいませんでした」
数人の親が、オヤツの時間に悠人や蒼太・美桜に申し訳なさそうに言う。この親達は、古株の生徒の親でもある。
「いやいや、全然OKですよ。俺と美桜も普段は英国だし、アーネストとレオンなんかこの家に茶碗まである位入り浸ってるし」
カラカラと笑う蒼太。
「賑やかでいいですよ」
「私は、今年初めてだったんですよ。1月に入会したんですが、先生がガイジンさんだとは近所に住んでて知りませんでしたよー」
小学1年の息子の母は、家と住人のギャップに驚いたらしい。
お互い親と指導者の交流会が出来て、良い収穫だったと満足そうに親は思い、普段静かな家に子供の声が響く。
「せんせー、ありがとうございました♪」
生徒御一行が可愛らしく礼をして、ガヤガヤと帰宅したのが30分ほど前。
静かになりすぎて、美桜が笑った程だ。
寝転がってTVを見ていた蒼太が、むくっと立ち上がりどこかに走って行き直ぐ戻ってきた。
「そうそう、これ毎年のアレなんだけど。招待状。」
おとぎ話に出てきそうな、凝った装飾の封筒には、封蝋がしてある。
「ん、分かった。六花、夏にイギリス行きたい?」
招待状を六花に渡すが、受け取った六花は情けない顔で笑う。
「全部英語で書いてあるー」
「ああ、僕たちは普段英語で喋るから。」
「んじゃ、私が来るまでは皆ここで英語?」
「うん、英語よ?」
美桜がニコっと笑う。
「それは気にしなくていいから、つまり7月にばーさまの誕生日会やら諸々兼ねたお茶会するから、遊びに来ませんか?って。」
「行く♪」
六花の卒業旅行はハワイだ、幸いな事に5年パスポートを取得しているので問題ない。
「って事で、言っておいて。」
分かったと蒼太は頷く。
「楽しみだなぁ~、同じメンバーばっかりで飽きて来たんだよ本音はね」
「おばーちゃまも、喜ぶわ」
にっこり顔を揃えて笑う兄妹。
「あーっと、美桜確かダンス得意だった?」
不思議そうに兄である悠人を見て、コクンと頷く。
「六花、今から美桜にダンス習って?それでもって2人が帰国までに、一応の基礎は理解してほしいな?」
ニッコリ。
「だ…ダンス?ダンスって創作ダンスしかした事無いけど?きっと違うよね、社交ダンス?」
「そう、そっちのダンス。ひょっとしたらダンスはしなくていいかもだけど、念には念を入れて…だな?」
目線で蒼太を見れば、苦笑して頷いている。
「可能性は半分だけどね、出来ずに行くより出来て行く方が遥かにマシ」
意味が分からないまま、美桜に引きずられるように六花は連れ去られ2人が帰国する3日後まで、暇があればダンスの基礎練習に打ち込むのであった。
基本的に、更新はシンデレラタイムにしています。




