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櫻の樹の下で  作者: 赤司 恭
櫻の樹の下で、君と出会った。
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想ヒ人①

悠人は英国に来ていた、サイキックの情報提供をしている関係で、研究所の大きな催仕事には呼ばれる事があるのだ。


「ヴィ、元気していた?」


聞き覚えのある言葉に振り返れば、悠人と同じ色でオッドアイの『魔女』だ。噂では100年超えて生きているいう彼女は、見た目は20代前半にしか見えない。

アッシュブロンドは腰まであり、2児の母でもある。悠人とは子供の頃から顔を突き合わせていて、サイキックの事を教えてくれた師匠に近い存在でもある。


「フィー、久しぶり。」


「まだいるだろうと思って来て良かった、前回頼まれていた物持ってきた。」


小さな平べったい箱を手渡され、中身をみるとアンティーク調の瓶に入った液体が数本。手書きのラベルが、中身を表していた。


「ひょっとして、アロマオイル?覚えてた?」


「当たり前、お前のノロケ話散々聞かされて胸やけしていたからな。」


そう言う口は悪いが、クスクスとフィーは笑う。


「ありがとう、絶対喜ぶよ。フィーに今度会って貰いたいな」


「噂の彼女だからな、夏の会合に連れてくればいい。」


『ありがとう』と、ニコリと笑う顔を同じように笑顔で見送る。



近くのロータリーでダウェル家の車を見つける、運転手のピーターがにこやかに扉を開き悠人を中へと誘う。


「悠人さまお疲れ様でした、会合とやらはいつも長時間でお疲れでしょう?」


「いやいや、座っているだけだしね。僕達協力者サンプルは、喋る事ないんだよ?」


フィーから貰った小箱を後部座席の隅に、落ちない様にして置く。日本に残してきた六花は、以前からアロマが趣味で今回の帰国もお土産はアロマオイルな位だ。


「それはどうされました?」


「同じ協力者で、作ってくれたんだよ。六花喜ぶかな?」


「喜びますとも!」




「おや?故障ですかな?」


「ピーター、ちょっと止めて」


黒塗りの車が、ハイウェイに止まっており黒髪の若者がボンネットを開けて、腰に手を当てて悩んでいるようだ。


「エンジン…でございましょうか?」


「どうだろう?」


若者が近寄って来たので、ピーターが助手席の窓細くを開けると若者が困った顔で、「エンジンの調子が…」と言う。

ピーターが悠人の顔を見るので、頷いて促すと出るために車のロックを解除した瞬間だった。運転席の扉を勢いよく空けられ、目出し帽をした男性がピーターを引っ張りだす。


「ピーター!」


後部座席も左右から開けられ、ゴツゴツとした手が悠人の腕を掴み車外に引っ張りだした。


「なにするんだっ」


腕を掴んだ人間の顎を蹴り飛ばし、返した足で背後の人間を2人程蹴り飛ばす。背後から肩に手を掛けた人間の腕を掴んで、背負い投げをして投げ飛ばしたが、顔を上げると正面に銃口が付きつけられた。


「流石ダウェル家のご長男ですね、申し訳ありませんが我々とご同行お願いします。」


「行ってたまるか」


「困りますね、手ぶらで戻ると私も主人に叱られますので」


そう言い終わらないうちに、背後から薬品の染みた匂いのする布を当てられた。

意識の失う寸前に見たのは、車の横で倒れたままのピーターだった。




会合は17時に終わり、少なくとも19時過ぎには帰宅する予定だった悠人が、ダウェル家に戻らないと騒ぎになったのが夜中だ。


普段連絡無しでは無断な事はしないからこその騒ぎで、ピーターも勤続25年今までこんな事は無く、執事長がGPSで車の位置を検索し執事達が探しに行くと倒れたままのピーターを発見した。


最悪な事に、近くで祭りがあった為に道路を封鎖した。それがピーターが襲撃された直後なのだ、そのせいで誰も人が通らなく発見されなかった。



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