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櫻の樹の下で  作者: 赤司 恭
櫻の樹の下で、君と出会った。
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かいてきせいかつ。

梅雨に入ってジメジメ度が上がったかと、悠人は室温計を見る。

28度、湿度は室温より高い…。

もともと外人体質、イギリスもスウェーデンもスイスも高温多湿ではない。――筈だ。

夏場の地獄のような気温は、体力を削り取り室内で熱中症になりかけたのも1度や2度ではない。大学時代の論文作成時、SE時代のプログラム構築中など自宅で作業していると、ことごとく熱にやられるので夏場の和奈城家は、除湿と冷房のパレードだ。除湿機内蔵ではない冷房機、昨年の梅雨以来の除湿機のスイッチを入れれば、ウンともスンとも言わない。


「壊れたか…。」


部屋が広いもので大きな除湿機だ、それが動かないとなると湿気がうっとおしい。

階下に降りて納戸の中から他の除湿機を引っ張りだすが、2台あったものの両方起動すらしない。


「葉山さん、加藤さん。除湿機は使いますよね?」


リビングで、昼食を取っていた2人が是非にと首を縦に振るのだ。


「んじゃ、ちょっと電器屋行ってきます。」






「いらっしゃいませー」


景気良く挨拶をする店員は、悠人を見ると視線がバシャバシャ泳いでいる。

スクエア型のブラウンのサングラスをし、極フツーの半そでを着ているのだが…。



20畳対応の除湿機は豊富にあり、イオンだの何だのと付加機能が多い。

手頃な商品を見付け、後は冷房も見る。和奈城の家は古いし、冷房も昔のままなのでいっそ全部ではないが頻繁に使う部屋を、新しいのに変えてみようと思ったから。

冷房機にも除湿機能があるらしく、そうなるとどうしようかと悩み除湿機を1台にして冷房機を2台にしようと、結論を出す。


キョロキョロと周囲を見渡せば、少し離れた場所にいる客には店員が張り付いているが、悠人の周辺にはいない。


店内をブラブラとうろつけばいるだろうと移動するが、やはり店員はいなくて振り返って自分がいた場所には、まさかの店員が接客していた。



『避けられてる』



外人の外見で、損やら特をする事は色々あるが電器屋の店員に避けられるのは初体験。

店内を2周した頃に、ベテランらしき30代位の男性店員と目があう。ひきつった笑顔で、何事かゴニョゴニョ言っていたが、悠人が手招きして強引に呼び寄せる。


「いらっしゃいませぇ…え~っと、ハロー?」


「やっぱりそれでか、日本語喋れないと思ってたでしょ?」


「へ?」


「多分君より日本語上手だから、除湿機と冷房機欲しいんだけどね?」


自分の早とちりで、悠人を避けていた冷房担当のホシノと言う店員は平謝りしながらも、気持ちだとばっちり気持ちよく値引きをして即日発送を約束した。


「いやぁ、どこかの王子様みたいなお客さまでしょ?不覚にも、腰が引けてしまいました」


「電器屋で店員探して困るって、初めてだよホント」


苦笑し、「次回も御贔屓に♪」と名刺を渡してくるのには、流石商売人だと思わず受け取った。


「じゃ、僕の友達にもホシノ君の名前を教えておくよ」


「ありがとうございますー♪」


「…ドイツ人と、カナダ人だけど?」


「…が、がんばりまーす。」


接客系の仕事なのに、変なヤツと思いながら帰宅し、遊びに来ていたレオンとアーネストそれに留守番の六花に事の顛末を言えば、大笑いだ。


「あんまり遅いから、どこまで行ったんだって言ってたんだ」


「だってさ、冷房売ってくれないんだよ!」


その困った姿を、是非見たかったと3人は口を揃えて言う。

苦心して買った冷房は、当日早速取り付けが始まり梅雨と夏場を快適に過ごせる事を、約束してくれた。


私は、コンビニの会計時に「にくまんください」と言ってもスルーされる人間デス(爆)いいさ、次がああるさ…って感じで、オーダーの時は腹に力を入れて言いますよ。

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