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櫻の樹の下で  作者: 赤司 恭
櫻の樹の下で、君と出会った。
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はなよめ。②

「ゆーこちゃーん」


新郎新婦の控室の入り口から、よしこと一緒に顔をヒョッコリ出す。


「おー!来たね?ずずいと入って~」


新郎にペコリと挨拶して、近くで見る裕子を目を細めて見る。純白のドレスは、マーメイドライン。腰に大きな花を模したリボンが、裾に流れて綺麗だ。


「あ!これね、ヴィから。花嫁さんが靴に入れていたら、幸せになれるらしいよ?」


「まーじーでェ?これ、すっごい人気があってレプリカも凄く入手困難なんだよぉ。」


嬉々として封筒から出して、靴の中に入れると嬉しそうだ。


「なんか、英国の実家から送って貰ったみたい。」


「え?和奈城さんて、染めとカラコンじゃないの?彫深いけど?」


キョトンとした顔の山田に、裕子と六花が爆笑する。


「よしこ、あんたまーた顔ちゃんと見てないでしょ?和奈城君は、名前は日本だけどほぼ外人だよ?1/4だっけ日本?」


裕子の言葉に、六花が頷く。



受付は打ち合わせ通りに、滞りなく済み最後の方で悠人が来てサラサラと達筆に名前を記入し、お祝い袋を置いていく。最後に受付が席に着くと、六花を山田と悠人で挟んだ席次。

6人座れる丸テーブルには、他に裕子の会社の同僚らしき女性がいて、それぞれに挨拶すればニコニコと喋りやすい。次々と来る食事を端から片づければ、いつの間にか会社の人の挨拶やら同級生の歌だの始っている。


「和奈城さん、聞いていいですか?」


「はい?」


行儀よく両手を膝についたような姿勢なので、悠人も手を開けて山田を見る。


「あのー、和奈城さんってどういう配合率なんですか?」


一瞬固まったが、六花が質問の意味を理解する前に、悠人はちゃんと即座に理解していた。


「父方の祖父がスイス、祖母が日本。母方の祖母がスウェーデンで祖父がイギリス、父はハーフで母は純正外人ですね。正直日本率はかなり薄いかな?」



「成程です~、どう言う感じなのか知りたくて。ありがとうございます」


ニッコリ笑うと、食事を再開する山田を見て声を震わせて笑う悠人を、六花は苦笑して見る。


「も~、よしこちゃんまた不思議な事言うし。」


「僕も配合率って言われたの初めてだよ、まぁ…確かにね。ちょっと不思議系?ウチの忍みたいだね」


「忍ちゃん?」


山田が不思議そうな顔をして、六花を見るので「日本人形みたいで、可愛い顔の女の子だよ」と教える。


「でも、忍はイノシシだから。その辺りは、山田さんとは違うねぇ」


クスクス楽しそうに笑い、デザートが運ばれてくるのを見て悠人は六花が食べ終わったと同時に、自分のデザート皿を押しやる。


裕子のお色直しが終わり、カラードレスは深紅のふんわりとしたドレス。キャンドルサービスで、テーブルに来た時に同僚女性がキャンドルにエビの尻尾殻を載せ火が付かない新郎新婦が焦る…と言うイタズラをして大爆笑だ。


「あんたたちー、覚えてなさいよ!」


くわっと怒るが、やがて笑顔で去って行く。

フリータイムでは、テーブルごとに高砂で写真を撮りやはりと言うか、必然的に新郎の次に悠人も目立っていた。


新郎新婦が一生懸命考えた披露宴は大成功、二次会にも参加の悠人と六花は所用をこなして少し遅れて参加した。ビッフェスタイルで、悠人が食事を取りに行くのに甘え、ソファで待っていると裕子がやってきた。


「裕子ちゃん綺麗だったー!」


「六花の参考になった?」


「なったよー!」


きゃいきゃい騒ぎ二次会は、花嫁の知り合いは六花達数名だけらしく他は新郎の知り合いばかりだとか。


「こんばんわー」


ぎょっとして正面を見たら、知らない男性が2名。


「飲んでるー?飲まなきゃ損だよー」


「それウーロンじゃない?ビール?取ってこようか?」


裕子を見るがプルプルと顔を左右に振る、どうやら新郎の連れらしい。


「新郎さんのお友達ですか?」


「「そう!」」


ピッチャーをそれぞれに持った男性は、六花と同じ年位。話しながらも、ビールはグイグイ減るのだ。


「新婦ちゃんと2人だし、寂しいかなって来たんだよね」


「うん、寂しくないと思うけどね。」


にゅっとソファの後ろから足が出て来て、背もたれをまたいで六花の横に座る両手には料理の乗った皿。


「ヴィ~」


悠人の出没にギョっとし、男性2人はたがいに顔を見合わせて裕子と六花に照れ笑いをして、スーっと席を立ちどこかに消えて行った。


「…確か、交際相手は結婚式場でって聞くけど、実践するとはね」


「悪気はないのよー、許してあげてね?」


裕子の言葉に、肩をすくめて少し笑う。


「そうだ、コインありがとう!」


「あぁ…いいのに、弟に言ったら結構枚数あったからね、分けて貰った」


そう言ってる間に、新郎もやって来てコインの話から悠人の結婚の話だ。


「結婚?するよ、プロポーズはまだだけどね。ちょっと身内ごとで、ゴタゴタしていたけどね。」


テーブルサービスでケーキが配られ、幸せ一杯の顔で食べる六花の頬に付いた生クリームを、「付いてる…」と言って親指でぬぐってペロリと舐める。


「ふぁにが?」


「…一生懸命食べなさいね」


ケーキに釣られて聞いていなかったのだろう、六花は悠人に言われるがままに引き続きケーキだ。

しかし悠人の仕草を見ていた新郎新婦は、薄ら笑いを浮かべて見ている。


「結婚式には呼んでねー?」


「呼びますけど、まぁ手順を踏んで行きますので、もうしばらくお待ちください。っと電池切れかな?」


トロンとした目で、悠人を見ている六花を見付け時計を見れば0時を廻っている。

新郎のお友達が、3次会だと吠えているところを見ればもうこの会場も終わりなのだろう。


「3次会って言ってますが?」


「…あるんだなぁ、和奈城君って面白いね。今度メシでもどうですか?」


「いいですね、週休2日でいますから、今度ウチでも来てください。奥様が住所知ってますよ、一時週3で六花と晩御飯食べてましたから」


「駄目だよバラしちゃー、だって和奈城さんの晩御飯おいしいもん!!」


家政婦に言っておきますと言えば、今度の晩御飯もリクエストしていい?と言う裕子に、新郎は目を丸くする。


「裕子ちゃん、またお茶しよーね!でも、新婚さんだから旦那さんのお邪魔にならない時にね?」


目が覚めたのか、しゃっきり立ち最後にそう言い残して2人を見送る新郎新婦。


「なぁ裕子、このご時世に週休2日で家政婦いるお宅ってナニ?」


「彼女溺愛しちゃってる、自営業を継いだ若様だよ♪」


いまいちピンと来るような来ないような答えに、新郎は首をかしげつつも3次会へと行くのであった。



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