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櫻の樹の下で  作者: 赤司 恭
櫻の樹の下で、君と出会った。
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はなよめ。①


「結婚?」


海鮮が売りの居酒屋で、個室で話があると裕子に呼び出され仕事を切り上げて来たのが先ほど。

六花はウッカリ飲み物を落としそうになって、悠人はそっちに肝を冷やす。


「うん、ちょっと話が早く進んじゃったけどネ」


レオンやアーネストが格好良いと、きゃあきゃあ騒いでいたのが去年かその前か…。

六花とだけではなく、時折悠人も混ぜて3人で食事もしていたので、交際相手が出来たのは知っていた―――半年前だ。


「おめでとー!」


「早かったね」


ニコニコ笑い、左手薬指には婚約指輪だ。


「ありがと♪ 2人には、是非是非式に参加して欲しいのだけど、いいかな?」


「「よろこんで」」


式場は人気があるらしく、ビルの高層階のテラスでやるとの事。6月に入る前の日曜日を、死に物狂いで担当者を拝み倒し獲得したらしい。


「6月の花嫁ジューンブライドもいいけど、湿気じゃない?梅雨じゃない?だから、梅雨前ギリでしようと思って」


「裕子ちゃん綺麗なドレス楽しみにしてるね!」


「まっかせなさーい、ちゃんと目に焼き付けて自分の式に活用しなさいよ?」


赤くなる六花を見て、意地悪そうに笑う裕子へ「余計な事言うな」と言う意味の視線を投げる悠人である。悠人も、考えていない事はないのだが会社の事があってゴタゴタしていたので、婚約のままである。これはちゃんとけじめしないとな…と密かに思案するのであった。




「うん、似合う」


目を細め結婚式の朝に、六花が着たパーティードレスを見て悠人は嬉しそうだ。

黒のボレロに、ひざ丈の薄いピンクのサテンドレスは、色の白い六花に良く映えていて薔薇の飾りが付いたチェーン付きのミニバッグも可愛らしい。


朝一番に髪の毛をセットする為に、現在8時前に着替えてこれから美容室に行くのだ。


「ヴィはオトコだもんね、セットもしなくていいから楽だよねー。」


「受付もするんだし、ちゃんとセットしておかないと駄目だよ?」


ふふふ…と笑い、腰まである六花の髪を弄ってからいつも身に付けているネックレスを、首に付けてあげる。


「んじゃ、1時間後にね?」


「はいはい、御姫様」



1時間後に出て来た六花は、清楚系の結い方をしてあり悠人の顔を見つけると、嬉しそうな照れたような顔でパタパタと車に寄って来た。


「お待たせぇ」


「可愛い、他の男どもに見せるのは惜しいな」


「コラコラ、結婚式に参加なんだからね?」


クスクスと笑い、女子の受付のもう一人は同級生なのだが久しぶりに会うとの事。


「久しぶりなの、電話で打ち合わせしていたんだけど。なんか結婚式って、同窓会みたいよね?」


「僕の参加する結婚式も、そんな感じだったかな。まぁインターナショナルだから、面子はあまり揃わないんだけど」


国外にいる人間も多く、時折メールが来る同級生はもう子持ちもいるのだ。


裏道を使い、渋滞を避けて移動すれば予定より早く到着し控室に向かえば、受付を一緒にする女性が六花を見つけて近寄って来た。


「はなちゃん?」


「よっちゃん?」


『きゃー』と、手をつないでピョンピョン跳ねるのだ。自然控室の人間の視線を集める事になり、隅っこに行って3人座りサービスのお茶を貰う。


「あのね、同級生で受付を一緒にする、山田よしこちゃん。よしこちゃん、こっちは和奈城君。」


「初めまして、山田さん。今日は六花が、お世話になります」


ニコ…と笑えば、目を泳がせた山田がぎこちなく悠人を見る。


「は…はじめまして、はなちゃんこんなにイケメンの彼氏作ったのね?ちゃんと見れないわー」


耳まで真っ赤になる山田は、高校以外女子だらけの学校育ちのせいで免疫がないらしい。おまけに今の職場は女だらけだとか。


「大丈夫よぉ」


悠人が何か内ポケットから出すのは、小さな封筒。人差し指と中指で挟んで、ピと六花に見せる。


「なにこれ?」


「英国のあっちに連絡して送って貰った6ペンスコイン、花嫁さんの靴に入れたら幸せになるらしいよ?そう言う事で、よろしくね?」


「うん!裕子ちゃん、きっと喜ぶと思う!」


丁度受付の人間を集めての打ち合わせが始まったので、よしこと一緒に廊下に出て行く姿を見送った。


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