77/158
序章
蒸し蒸しと寝苦しく、六花は夜中にパカリと目が覚めた。
背中と腰にクルリと廻された手に手を重ね、小さく笑って再び目を閉じる。
夕暮れで真っ赤になった空が見える自室、悠人がベットに向かって窓を背にして座っている。
『ヴィ?』
自分は寝ているらしく、六花が腕を差し伸べると少し俯いていた悠人の顔が上に少し上がる。
夕日で少し赤く染まっていた悠人は、静かにただ静かに―――泣いていた。
頬を伝って顎先から、パタパタと涙が流れている姿は六花は、未だに見た事が無い。
『どうして泣いているの?』
次に覚醒すると、目覚める2時間前。
先ほどより3時間経過、薄明るくなった部屋はカーテンから漏れた光が部屋を明るくしている。
顔を上げれば、見慣れてもなお秀麗な顔が目を固く閉じて、規則正しく寝息を経てている。
とりあえず、シャワーを浴びようとベットの下に落ちた寝巻を取ろうとするが、体を捻ればギュっと廻された腕に力が籠り動けない。
諦めて、六花は再び目を閉じる事にした。
次は、少し良い夢を見れる事を祈って―――。




