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櫻の樹の下で  作者: 赤司 恭
櫻の樹の下で、君と出会った。
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びたー あんど すうぃーつ…?

寒さが厳しい2月―――



休日出勤を余儀なくされた悠人が出勤し、女性しかいない和奈城の屋敷の広い台所には女性3名が集まる。


「横田さん、葉山さんお願いします。」


「ちょっと見ているだけですよ?手は出しませんからね?お嬢さん」


コクンと頷いて、材料を並べた。昨日デパートで物色して来たのだが、悠人は甘いものをあまり食べない。バレンタインチョコを作るのに甘くないのはどうだろうと悩み、葉山と横山に相談した所ケーキをコーティングしてはどうだろうか?と提案を受けたのだ。朝早くから準備し、いまオーブンではケーキ生地がグルグル回って焼いている最中だ。


「このチョコを、溶かして掛けておわりなんだよねー」


「そうですよ、和奈城さまはお酒大丈夫なんでしょう?でしたら、ラム酒をケーキ生地に染み込ませると風味が宜しいですよ。」


ニコニコと常備しているのか、割と大き目のラム酒瓶を葉山が準備し、シリコン製のハケを六花が握って小皿に少量出す。


丁度よく焼け上がり2枚上下にカットし、荒熱を取ってテキパキとラム酒を塗りつけてしっとりさせると今度はチョコ。


お湯を沸かしている最中に、ハンドミキサーで生クリームを泡立て、ゆっくり溶かしてい丁度よいチョコを生クリームに混ぜて、ケーキに挟んで一口サイズに切る。


「お嬢さん頑張って~!次は、コーティングですよ!」


使用済の容器をお湯に浸し、六花がチョコを滑らかに溶かしてバターとクリームを少量加え。バットの上にケーキを並べ、上からチョコを掛けて少し乾かし今度はケーキの底もチョコを付けて完成だ。予備も含めて、大量に作り出来上がった頃には開始から2時間は経過していた。


「美味しい!」


「美味しいですよー!ラム酒が効いていて♪」


1個ずつキャラメルのように、セロハンで包んで品の良い紙箱に詰めて完成だ。


「私達はねー、レオン君とアーネスト君と青山君に、手作りチョコを作ったんですよ♪」


小さなハートチョコが、コロコロと箱に入っており味見した六花は、アーモンド入りもあって驚いた。


「美味しい~♪和食だけじゃなくて、お菓子も出来るんですね」


「だって、葉山さんはお菓子教室に通い詰めた人なのよ。年間行事で使えそうなお菓子は、葉山さんにとっては簡単なもんよ」


「横山さんってば!趣味で通っていたんですよ、まだまだ素人同然ですよぉ」


顔を赤らめて、恥ずかしそうにヤダーとか言ってる葉山を見て六花は自然に頬を緩める。






「はい、バレンタインだよー」


自室の小さな冷蔵庫から、昼間に作ったチョコケーキを渡すと嬉しそうに悠人が嬉しそうに、箱をゆっくりと開ける。


「チョコ…ケーキかな?」


「うん、ヴィは甘いの苦手で食べないデショ?だから、ちょっと苦いビターなケーキだよ?」


「うんこれならいくらでもいけそう、六花上手だねぇ」


冷蔵庫から、一緒に用意したスパークリング白ワインをグラスに渡して、それも美味しそうに飲み干す。


「六花もケーキ食べる?」


「それね、ラム酒が沢山染み込ませてあるから、私が食べると酔っちゃうの。」


「じゃあ、家政婦さん達から貰ったチョコ食べる?」


カリカリとアーモンドが美味しいチョコを食べていると、悠人がスパークリングワインを美味しそうに飲んでいる。少し飲むか?とグラスを口に付けて、ちょっと傾けて飲む。


「…おいしーい、ワインとチョコって本当にあうのね!」


10個あるケーキを3つ食べ終わり、冷蔵庫に仕舞って風呂の用意をして戻れば、ほのかに頬を赤くして六花が見上げて来た。

片手には、ほとんど無くなっているスパークリングワインの瓶…。


「…おいちかった」


「飲んだか…」


ガックリと肩を落とし、ラグに膝を突いてソファにくったり座る六花を覗きこむ。


「六花ちゃん、お酒飲めないんじゃなかったかな?」


「のめにゃいもーん、でも、これはサイダーなのぉ」


クスリと笑って、「いいけどね」と呟く。


「六花、キスして?」


「ちっす?」


こっくり満面の笑みで頷き、両腕を悠人の首に絡めて濃いキスをいきなり始める。


その後風呂に同行し、翌朝目覚めた六花は腰が立たなくて不思議がりながら、首や胸の赤いのを見て驚くのであった。





* 1カ月後―――



「はい、バレンタインのお返し」


可愛らしい深紅の大輪の薔薇のミニブーケが、透明な箱に入ってラッピングされている。


「きゃー、可愛い!」


かさかさと丁寧に開封すれば、ほのかにチョコの香り。


「これ?」


「それね、チョコで出来ているんだよ。」


花弁が一枚ずつ、チョコで出来ていて丁寧に組み合わさっているのだ。


パリと食べれば、甘いチョコの味。そっともう一枚めくって、悠人に差し出せばパクリと咥えて不敵に笑う。


「甘いけど…、ヴィは食べれる?」


頭を抱き寄せられ、咥えたままのチョコの花弁を六花の口に入れ、舌で奥まで押し込まれて唇を合わせる。


何度も角度を変え、深く合わせて顔を離せば口角から溶けて漏れたチョコを、「ちゅ」と舐めとる。




『Honey It loves.』



擦れた声で耳元で囁かれ、嬉しそうな顔で六花は微笑む。


長期お休みありがとうございました、復活第一弾は極甘目指しましたよ。

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