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櫻の樹の下で  作者: 赤司 恭
櫻の樹の下で、君と出会った。
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にぎやかなひ。

~♪


風呂も済んだ午後20時、蒼太も美桜も自室に戻りアーネストとレオンも和奈城家裏のマンションに戻った。結局悠人の部屋で寝起きする事に決め、六花は隣の部屋に自室を持つことに決めて細々としたものは、後々整理しようとセミダブルのベットに寝転がり親友から来たメールに返信をしていた。



悠人の私室は10畳ほどあり、リビングと同じ黒っぽい柱と同じ系統のフローリング。壁は白のしっくい塗り。明日は仕事帰りに、親友から会わないかと誘いがあった。




「ね?明日仕事帰りに、トモダチと食事に行っていい?」



振りかえると、まだ濡れた髪をオールバックにしてる悠人がこちらを見て思案している。



「僕は多分明日、出社してから日帰り出張。だからゆっくりしておいで」


「出張?遠いの?」


親友にOKだとメールをしながら、チラリと見れば近場だと返事が帰ってくる。


「蒼太と美桜がいるから、下にメモでも残しておけばいいよ。」







春物のコートと、お気に入りのスカートにブーツをはいてロッカーでチェックしていると愛梨がひょこっと覗き込んで笑う。


「課長とデートだ?」


「ブブー!出張だからそれは無いのだ、古いお友達と夕飯一緒にするの♪」


夜はオオカミが大量発生だから、気をつけなさいよーっと忠告されて元気よく出発。

会社の近くの駅前カフェで合流し、窓側で親友が来るのをワクワクと待っていればコンコンと窓を叩かれる。相手はニパっと笑って、走って店内に入ってきた。



「ひーさーしーぶーりー!!」


「ほんと久しぶりよね、六花元気してた?」


「元気元気♪何食べる?お勧めってコレみたいよ」



メニューを仲良く覗き込み、コレがいいだのアレがいいだのと決めていく。


藤岡裕子 某企業の受付をしている、六花とは幼稚園からの付き合いだ。

見た眼ハデだが、中身はしっかり者で六花のフォローに廻ってくれている。

2人で決めたメニューは、噂通り凄く美味しくて普段なかなか会えない事もあって話に花が咲き乱れる。


「あ!そぉだ~、あんたこの間引っ越したって住所来たけど結構な住宅街に引っ越したわね?」


エヘヘと、笑う。


「あのね、それで今日ちょっと言う事あって…彼氏さんが出来ましたー♪」


「えええええぇぇぇぇ、マジマジ?あんた初めての彼氏じゃないの?オメデトー♪」


そう言ったときに、カフェの店員がラストオーダーを告げに来た時間は21時半だ。

ドリンクを頼んで、裕子はがっちり六花の両手を握る。


「どんな人?いくつ?職種は?」


ギラギラした目に、六花は若干後ろにのけぞる。


「27歳で、職場の上司で…」


「オフィースラーブ!」


「そうそう、優しいの。和奈城さんて言います」


にこーっと笑う六花に、裕子も釣られてニヘラと笑うが直ぐに顔をキリと引き締める。


「他に言うことあるでしょ?交際と同時じゃないの!引っ越し」


「あ…この間お父さん達に、紹介する事になってそのまま公認ってヤツに。」


「親公認の同棲?マジで言ってるの?!」


コクコクと頷く六花に、裕子は口を開けたまま目をむいて驚きっぱなしだ。


「呆れた、アンタんちって結構今時にしては厳しいから、そうゆうのってもっと後だと思ってた。」


オーダーのドリンクは、二人ともホットティだ。

運ばれて来た美味しい紅茶を、少し飲んで裕子は落ち着いたのか声が小さくなる。


「変な人間だったら逃げなさいよ?新しい家と、あたしのマンション近いから場所分かるわよね?」


「だいじょーぶよぉ」


「分からないわよ?急に親が病気になったとか、生き別れの兄弟だとか言ってお金搾り取る輩も世間にはいるんだから!」


裕子は心配性だなぁと笑い、閉店が差し迫っているので帰ろうと準備をして会計をする。彼氏記念で、裕子がオゴリだと言うので六花はありがたくごちそうになり会計中に、メールをする。




「裕子このまま電車で帰るの?」


「そうよ?六花も引っ越して最寄駅一緒だよね?」


寒い…と、少し首をすくめる。春とは言え、夜は少し肌寒い。


「お迎え来てくれるみたいなの、一緒に乗って行かない?」


「乗る!そして、見る!」


目的がはっきり分かる裕子の返事に、笑ってメール返信して近くのショーウィンドウで雑貨を覗き込んでどれがいいかと品評会。


裕子も六花も、カントリー雑貨が好きで暇が合えば色々買い物めぐりをするほどだ。


「お気に召すのがありますか?」


六花の聞きなれた低い声が、後ろから聞こえ振り返れば悠人が微かに笑ってた。


「おかえり!」


「ただいま」


六花に悠人は笑い、隣の裕子を見て六花に目線を投げる。


「今日会うって言ってた、お友達かな?初めまして、和奈城です」


「そう!子供の頃からのお友達で、藤岡裕子ちゃんだよ?自宅からもウチに近くなったの。」


裕子は、真っ赤な顔して何事かパクパク言っていたが、直ぐに立ち直り「藤岡です」と自己紹介をしていた。近くのタイムズに止めていた車に乗り込み、裕子が悠人を変な人間じゃないかと疑っていた話には悠人も苦笑を禁じ得ない。


「そうですね、確かに変な人間って思われるけど?」


「いやいや、和奈城さんそれは物の例えで」


「見た目ガイジンだし、目玉の色は不ぞろいだし…ね?」


申し訳ありませんと、裕子は笑いながら謝るのを冗談ですよと悠人も気にしない。

裕子の自宅前で、車を止めると裕子は助手席の窓に張り付き。


「じゃあね!六花しっかり和奈城さんの、お嫁修行するのよ!」


「裕子ちゃん、まだそんなのじゃないから」


悠人にも一礼して、さっさと帰って行く裕子の後ろ姿を見送って盛大に社内で悠人は笑う。


「凄いね、変な男だったら切られちゃうかもしれないね」


「裕子ちゃんってば…、もう!」


クスクス笑う悠人は、『良いともだちだね』と呟く。


「うん、裕子ちゃんは凄いもん。いつも助けてくれたから」


今度ウチで、お茶でもしたら?の言葉に六花はニッコリ笑った。




「不思議な事だと思っていたけど?」


「なに?」


カコンと、石鹸を元に戻して悠人は六花を振りかえる。


「なんっで風呂が、1件のお宅に2つもあるの?」


悠人と六花、日常は2人で2Fの風呂を一緒に使うのが普通となってきた。


「なんでって…、あるから。」


「返事になってませーん」


悠人の腹に、赤い印を見つけ赤くなった六花があえて目をそらす。


「外国…北欧とか、アメリカとかで主にだったかな?1部屋に1風呂がセットなんだけど。母方の祖母がスウェーデン人だし、そうゆうのでじゃないかな?」


1Fの風呂が、メインの風呂なのだがこの家に来た当初、そのでかさに六花はびびった。

湯船も深く、この2Fの風呂も悠人の浸かる量にすると六花は鼻下まで水没する様子。

2人で風呂に入ってると知った蒼太と美桜は、ニヤニヤ笑っていたが六花は気にしないようにしている―――恥ずかしすぎるからだ。






「来週からゴールデンウィークで、初日と2日目が柔道の合宿になってるから、人が庭をウロウロするけど気にしないで」


「いっぱい?」


「いっぱい、皆で20人位かなぁ?親子で泊まりに来るから、離れ1棟で済むけど。料理とかもあっちでできるから、母屋に来る事ないからね」


その対処で、蒼太と美桜それに白クマと赤鬼なのだ。


「皆でお礼に草むしりしてくれるそうで助かるし」


ククと笑う悠人、美桜も蒼太も来日してから毎日草むしりしていて、春の雑草駆除に手を焼いている。六花も朝のうちに時間を見つけては、むしっていたのだがなかなか雑草は少なくなる気配がない。


「六花草むしりもいいけど、肌が赤くなってるからしなくていい」


「だって、私も何か役に立ちたいし…」


「いや、植木屋が週末に入る予定だし、六花は頑張り屋さんだからね」


カチリと、枕元の電気を消され部屋は暗闇へと転ずる。

悠人からは、先ほどの風呂で使った入浴剤の香りがして抱きしめられるように寝ると、香りに包まれるような気がすると考えながら六花は眠りに就いた。


まだまだつづきますよ。

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