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櫻の樹の下で  作者: 赤司 恭
櫻の樹の下で、君と出会った。
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あかおに。


青山の出した書類を読みながら、悠人の眉間にはクッキリと皺が寄る。

予想をしていただけに、絶叫はしなかったが水面下の動きを調べ上げた今、対処法を捻りださなくてはならない。


「まぁ予想していただけに、アレだね。」


「アレかよ。」


ふふふ…と、小さく笑う悠人をジトリと見る青山は、すぐに苦笑の顔になるが。


「僕がちょーっと留守している間に、かき回してくれるじゃない?整理整頓…しなきゃね?」


青山が知らないだけで、社内には悠人の「目」がある「耳」もある。代表的なのは、蒼太と松永だがどれだけの間者を持っているのかは、青山も分からない。


「それと、秘書補佐で六花を入れる。青山おまえの仕事でPCを使う下処理を、してもらう予定だ。」


「どーぞ、駄目って言っても入れるんだろ?」


あまり我儘を言わない悠人の事、青山が反対をする訳がないのだ。苦笑気味に笑い、メモ帳に書き込んで行く。


「人事も全部いじるぞ、査定の見直しからだな。」


仕事のワーカーホーリックと言われるだけあって、悠人は静かに燃えているようだ。

査定の書類をまた漁って来るのかと、青山は遠い目をしまた睡眠時間が短くなり、ジトリと六花に睨まれるのかと先を考え気が滅入る。


好きなだけ悩めと、青山が帰宅し書類の束を応接室に積み上げて、ユルリと足を組んでため息一つ。


「どうして、会社のお金を使うのかなぁ」



先月――9月末を持って六花は一身上の都合により退社し、数日前から和慎の秘書課に席を置き始めた。

通勤時間は変わらず、皆優しいと言う事で悠人は安心している。


今まで手を伸ばせば居たのだ、心配で仕方ないが辛抱だ。JJがサポートしているらしく、時折就業中に写真付きメールがやってくる。


「よぉ、辛気臭い顔してんなぁ」


応接室の扉が開き、アーネストが顔を出す。日曜の昼間、六花は幼馴染の裕子と遊びに行っているので不在だ。


家政婦に渡されたお茶を持ってやって来て、慎重に場所を選んで置く。


「まぁね他人事じゃないってのを、覚えておいてくれると嬉しいけど?」


「それは頭に叩き込んでいるサ、手伝う事ある?」


悠人の指示で、アーネストも仕事を手伝う。黙々と仕事をするが、時折悠人をチラと見れば眉間にクッキリの皺が刻まれていて、何も言うまいと再び作業に戻る。





夕方に帰宅した六花は、既に綺麗に片付いている応接室でぬるくなったお茶を飲むアーネストと悠人を見つける。


「何していたの?」


「お仕事だよ、悠人のねー。俺は手伝いだけど。」


新しくお茶を入れて、応接室からリビングに移動する。

お茶を並べてちゃんと座ってから、六花がお茶に手を出した辺りでチラリと悠人が、アーネストを見る。


「あのさ六花ちゃん、俺ね今月で会社辞めるわ。」


「辞めちゃうの?どうして?」


「親父の会社あるじゃん?アレを継ぐ事にしたんだよね、んで一旦戻る。その後は秘密」


パチンとウィンクされて、面食らう六花。


「辞めちゃうんだー?なんかずっと、レオンもアーネストもヴィの傍にいるんだと思っていたんだぁ」


「アーネストにも、都合があるからね。会おうと思えば、いつだって会えるよ」


「蒼太君も、来月に帰国しちゃうでしょ?段々と人がいなくなるねぇ」


「僕もね、パシリが居なくなるから寂しいなぁ」


クククと笑って、茶化して言う悠人にアーネストが笑う。

アーネストの親は、日本滞在時は商社マンだったのだが、帰国してから脱サラして事業を始め旨く発展したらしい。

アーネストの真反対の性格らしく、それを聞いた六花は想像が出来ないと頭を抱えた。



2週間後、アーネストはさらっと荷物を纏めて、カナダへと帰国した。


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