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櫻の樹の下で  作者: 赤司 恭
櫻の樹の下で、君と出会った。
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おちゃかい。

仕事を終えてさらうように連れてこられたのは、毎日仕事をしているオフィス街よりまだ大きい近くのオフィス街。


慣れた運転で悠人が地下駐車場に入ったのは、恐ろしく上に伸びたビル。


「どこに行くの?」


初夏に入りまだ日が高く、悠人は愛用のサングラスを着用したまま。


「ん、六花に見せておこうと思って…ね。怖くないよ、おいで」


地下駐車場から直接最上階を、エレベーターで上がるとフロアに入ってすぐに受付が有る。


「松永空いてるかな?ダウェルが来たって言ってくれる?」


1Fの総合受付と違い、品があって綺麗にメイクした女性が2人。うち1名が、ニッコリ笑って奥を示す。


「あちらの係の者が、ご案内しますのでご同行お願いします。」


振り返った先は、去年見たアイスティを振るまった女性。


「あぁ、君去年の。」


「やはりそうでしたか!後ろ姿で、そうではないかと。常務がお待ちです、ダウェル様」


六花の手を軽く握って、大丈夫だよと囁いて一緒に歩く。フロアの奥へ行くと重厚な色合いの扉があり、女性に案内されて入ればニコニコと笑っている初老の男性。


「お久しぶりでございますな、今回は…これまた可愛らしい女性を連れてこられて。」


「可愛いデショ?僕の部屋開けてくれる?」


松永は深く笑みを浮かべ、そのまま一同を案内して更に奥の部屋を案内する。扉は明るい木目で、ダウェルの城で見たような花は葉のレリーフを彫りこんである。


「この扉、城の改修の時にはずした扉をリメイクしたんだよ。」


懐かしげに触る悠人を見て、六花も触る。どこか懐かしいような、そんな感じがする。

ガチャリと松永がカギを開ければ、入って左奥に重厚なデスク。その前には、オリーブ色のソファセットがあった。


それだけの部屋。


パタンと女性が扉を閉め出て行く、夕焼けが見える窓辺から下が見えるが恐ろしい程高い。


「お尻がムズムズする…。」


「高いからねぇ、六花…ここで僕の仕事のサポートの勉強はしてみる気ないかな?」


ソファに案内し、そう言う悠人を松永は黙ってニコニコと見ている。


「勉強?」


「そう、今の会社からこっちに移籍するんだよ。僕がここに来て仕事を始めたら、もっと手伝って欲しいな?」


「んじゃ、このビル(ここ)って和慎のビルなの?」


「そう」


はにかむような笑顔に、六花は驚く。

来るまでの道中でも、オフィス街で群を抜いて大きいビルだったと思いかえす。


「僕は年度末まであっちに残らなきゃ駄目な契約だけど、六花は直ぐに移って貰ってもいいよ?大丈夫、ちゃんと先生はいるから」


「…うん、やってみる!」


「ありがとう!」


ぎゅっと抱き寄せて、ポンポンと背中を叩けば『ウンヌン』と、咳払いが聞こえる。


「…居たな、そういえば。」


「居ましたよ」


松永が流石に苦笑し、折角だからと蒼太も呼ぼうと内線を掛け始める。

入れ替わりに先ほどの女性が戻って来て、並べたのはアイスティ。


「ああ本庄君、もう一人追加になったんだ。お茶をお願いするよ」


「はい」


「さぁ、上手になったかな?」


「本庄君、密かに練習していましたぞ。悠人様に駄目押しされていましたからね」


去年の夏の話を六花にしてあげて、六花もドキドキしながら飲む。


「お、上達しているね。合格まではいかないけど、及第点。」


バッタンと扉が開けば、蒼太がヒョコと顔を出す。


「お疲れー!なにお茶飲んでるの?」


「お前のは、後ろのお姉さんが持ってる。」


「ダウェル君、はい。」


「サンキュー!」


勝手知ったる会長室、蒼太はどっかりと一人掛けのソファに座る。


「本庄君アイスティの判定貰わなきゃね」


松永の言葉に、本庄が顔を引き締めその言葉に、蒼太が笑う。


「あぁそうか、去年駄目押ししたんだっけ?」


「及第点だね、もう少し頑張れば合格。」


「良かったなぁ、兄貴はお茶には厳しいんだぞ!」


「え…?兄貴?ダウェル君のお兄さん?」


蒼太も悠人もクスクス笑い、サングラスを外すと国見は目を丸くしてお盆で顔を半分隠す。


「蒼太…ダウェルとは、双子だよ。よろしくね?…松永、ケイはまだいるのかな?」


「ケイ?アイツさっき見たよ?何すんの?」


携帯を掛け、「今すぐ最上階会長室に来い」と言って切る悠人に、不思議な顔をする。


「六花今から、先生くるから。とりあえず顔見せだけね?」


「男の人?女の人?」


コテンと首を傾げる仕草を見て、本庄は可愛らしい人だと内心思う。


「さぁどっちでしょう?」


暫くするとノック音がし、本庄がドアを開けると栗色の髪を持つ外人女性が顔を出す。


「はーい、Kayよー。ご指名ありがとぉ」


シャーベットカラーのスーツを来て、長い栗色の髪はサラサラと流れるように動く。

蒼太と悠人が立ち上がって、ハグをするが六花の眉間には小さく皺が入る。その顔を見て、コイコイと手招きしていきなりケイのアゴを上に向けて首を見せた。


「大丈夫、生物学的にはオスだから。」


「えーーーー?オカマさん?」


「やめいッ!」


ケイが真っ赤になって悠人の手を払い、蒼太の後ろに廻る。


「本名はどうする?自分で言う?」


「言うわよ、本名はジョシュア・ケイ。今はジャスミン・ケイよ。よろしくね、カワイコちゃん。愛称はJJよ」


ニッコリ笑って、成程デカイ手だと思いながらJJと握手する。


「こう見えても秘書課を纏めてるのよ、悠人から一応の話は聞いているから今度から秘書のイロハ、お勉強しましょーね?」


「お願いします!」


松永とケイと六花がニコニコしているのを、国見が見ている。

役員や重役の部屋があるこのフロアにいるのであれば、本庄も秘書であろう。


「本庄さんは、松永の秘書かな?」


「ええ、そうです。第二秘書を、させて頂いています。」


ふーん…と軽く唸る。


「専務は、最近だっけ?代替わりしたんだよね?」


「左様でございます、3年前に就任致しました。」


そうだったねと呟いて、悠人は黙ってしまう。何かあるのかと、蒼太がチラリと見るが思考の世界に入りきっているようだ。


「ヴィ?どしたの?」


本庄に任せてJJは部屋に戻り、声を掛けられた悠人はユルリと顔を振って笑う。


「さぁ、もう帰ろうか。松永も、遅くに手を取らせて悪いね。」


「いえいえ、悠人様のお幸せそうな顔を見れて、よろしゅうございますとも。」


ヒラヒラと手を振り、フロアを降りて行く3人を見送る松永と本庄。


「ダウェル君のお兄さんと、斎藤さんお似合いのカップルですね。」


「実に可愛らしいねぇ、ウチの娘もあのような感じだと、ワシも安心なんだがねぇ」


松永の言葉に、思わず本庄はクスリと笑う。


青山は、お仕事中…。

国見を本庄に名前修正しました(6/8)

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