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櫻の樹の下で  作者: 赤司 恭
櫻の樹の下で、君と出会った。
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ひがしのみやこ。 ③


翌朝いずみが起床すると、洗面所には昨夜いなかった女性が豪快に顔を洗っている最中で、回れ右をしようとする。


「あらあら、いずみちゃんね?」


くりっと振り返ったのは、キャロラインでささっと洗面台を拭いてどうぞ?と譲る。


「昨日の夜来たキャロラインよ、よろしくね?日本は10年ぶりなの♪」


ニコと笑うに、いずみも親しみを覚えて「斎藤いずみ」ですと自己紹介した。



「おはよう、いずみちゃん さとるくん」


朝からやってきたレオンが、しっかり朝食を取ってる横で既に悠人も食べていて、コテでカールさせている六花がいずみを捕まえて、クルクルと巻く。


「さとるくんと、かーさんはレオンと一緒に観光。いずみちゃんは、OL体験でもしてみる?」


「OL?いいの?」


「こらっ動かない! いいよ~、責任者が言ってるし。」


出来上がり♪と解放して、食卓に着く。ボリュームたっぷりの朝食に、全部食べるんだよと言われて必死に食べる。


「さとる君は、ガンダム見に行かない?」


「行く!」


即答で決まり、お台場に新しくできたショッピングセンターと聞いて、キャロラインは買い物意欲を燃やした。




社内の受付で記入して、「SAITOH」と書かれたプレートを手渡れる。


「これでウチのフロアは、自由に行き来出来るけど迷子にならないようにね」


女子の制服は、六花と同じサイズなので予備を着用し、ローファを履いて完成。

ミーティングの時に、職業体験だと伝えると口ぐちに「頑張れよー」と聞こえてくる。

新入社員も入りたてらしく、マゴマゴしてる男女が5人。


「じゃあいずみちゃんは、六花のサポートして貰おうかな~?これが課の席表で、ここの出来上がった書類とか、メモリとか配ってくれたらいいよ」


いずみが驚いたのは、20代なのに悠人が課長であったこと。そして、外資系の会社の内容にも驚いた。遠くの席で、昨夜見た赤毛がウロウロしているのも見える。


「がんばります!」


いずみは右往左往して配り歩き、1周して戻ると小さなお菓子を一杯貰って帰って来た。

困ったように笑ういずみに、暇な時間に食べればいいよと言えば、六花と分けて食べる。なかには瓶入りのプリンを3つくれた人もいたらしく、悠人に食べるかと聞く。


「や…プリンは鬼門なんだ、昔食べて気絶したから。。」


「プリンで?!」


悪いね…と言う顔は、嘘を付いているようには見えないので事実なのだろう。六花も知らなかったらしく、忘れない様に覚えた。


暫くすると課内で数人のミーティングをするので、六花と一緒にいずみも他の女子と3人でお茶の用意だ。OLならではの仕事に、嬉しそうに笑う姿をチラリと見る。


「お父さんも大変だな…。」


東の言葉に苦笑し、「まぁ1日だけだし」と返して書類を渡す。


「弟君は、レオンとウチのかーさんと3人でお台場だよ。」


「お母さん…来日していたのか?」


「あぁ弟が入院の事報告したら、2日で来た。10年ぶりの東京を満喫するらしいけど、ヒルズもお台場もスカイツリーもあの人初体験だからね。」


本気で観光客だよと、今日こっちの会社に来ていたらさぞかし賑やかだっただろう。レオンからの報告が、楽しみになる悠人だった。



帰宅すればマシンガンのように早口で、今日の出来事を報告するまさるにレオンも悠人も口角が上がる。


「楽しかった?」


「凄く楽しい!あんなの、長崎にはないもん!!」


今年で中学3年になると言うまさるだが、頬を赤くして興奮状態だ。


キャロラインからカメラを借りて、写真の中を見ると3人で楽しそうに映っている。


「…で?ちょっと買い物に走り過ぎた感ある?」


「まだまだ序の口よ♪」


紙袋が幾つもリビングの片隅に積まれており、お土産だと悠人や六花や蒼太も服を貰う。


「……まぁ、自分のお金だからいいけど。無駄遣いしないようにね、かぁさん・さとる君。」


明日からは千葉方面に足を伸ばすらしく、今日はOLごっこしたいずみも、一緒に行くそうだ。


「いずみちゃん、動いちゃ駄目ー」


両手を広げてじっとしている、アーネストが後ろから覗きこめばフレンチネイルを施しているとのこと。


「ハナちゃん、凄く綺麗な柄」


「シールだよぉ、100均とかで売ってるから今度探してみたら?」


コーティングまでして、1週間は取れないだろうと胸を張る。

いずみはサーモンピンク系、六花はベージュ系のネイルをして両手並べて嬉しそうに笑う。


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