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櫻の樹の下で  作者: 赤司 恭
櫻の樹の下で、君と出会った。
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ひがしのみやこ。 ②

渡り廊下が途中で分岐して、その先にポツンといきなり部屋があるのだ。

茶室のように壁におおわれたちゃんとした部屋なのだが、周りは全て庭なので分岐まで来ないと廊下側からは見えない。


「こんな部屋あったの?」


「あるよ、これは一応母屋扱いだけどね。最初離れに住むって言ってたでしょ?そうすると、食事の都度庭を縦断しなきゃ駄目だって分かって、移動したんだよ。」


コンコンとノックすれば、ヒョイと顔が出てきて何事か言う悠人の説明で蒼太はニコと笑う。


「散らかってるけど見る?和奈城の秘密基地。」


いずみが覗けば、ラックに収まったオーディオ機器やPCや、機械類が収まった現代風の部屋だった。


「すごーい、見かけとは全然違うんですねぇ」


「難点は、蚊が多い事かな?夏場大変だった…。」


屋内探検で気が済んだのか、いずみは礼を言って割り当てられた自室に戻って行った。


「探検したくなる気持ち分かる~。」


生まれ育った人間には、ちょっと分からないな…と、双子は言うが迷子だけはならないでねと念押しだけはしっかりとするのであった。



「ん?誰か来た?」


蒼太が玄関の方を見るが、生憎屋敷の奥なので玄関は見えないが3人で移動していると軽い足音が、聞こえてくる。家政婦の慌てた声が聞こえ、リビングに行けばいる筈のない人影。


「「かぁさん!」」


「息子―っ!血ぃ吐いたって本当なの?!」


小柄な身長が、精一杯背伸びして悠人の両頬を掴み、右へ左へ動かして顔色を見る。


「かぁさん、もう仕事に復帰してるから大丈夫だよ。」


ポカンとしている家政婦に、双子の母ですよと知らせると、慌ててお茶の用意を始める。


「ほらかぁさん、家政婦もびっくりしているから一度座る!」


肩を押さえてソファに座らせ、キャロラインは渋々座って家政婦のお茶を受け取る。


「あぁごめんなさい?双子がお世話になっています、母のキャロラインです。」


「誰だ教えたの?」


「え?俺」


ニパと笑う蒼太、復帰しているから事後報告で一応知らせたのが2日前で、まさか来日するとはとぼやく。


「鬼のように仕事片付けて、美桜に押しつけたけどあの子も来たがっていたわ~。でも、元気そうで良かった。」


ニパと笑い、ようやく六花を見て「騒いでごめんね?」と詫びた。


「せっかくこっち来たんだから、ゆっくりしていけば?」


「そうねぇ、一人でブラブラするのも退屈だもの。」


「あのーキャロラインさん、うちの従姉弟がこっちに今日から泊まっているんです。東京観光で、レオンさんが平日は案内してくれる予定なんですけど良かったらご一緒しません?」


ぱっと笑顔になり、「いいの」と連発。


「明日の朝に、本人達に言ってみたら?」


明日何着ようかしら?と、嬉しそうに言いながら疲れたから寝ると客間が空いてるか確認。


「藤と桐の部屋使ってるから、かぁさん葵の部屋使いなよー」


「良いわねー、葵の間って池が見えるのよね♪睡蓮咲いているかしら?」


「かぁさん、睡蓮それは夏咲きだから…。」


10年以上ぶりに来たキャロライン、さぞかし明日から同行する東京見物は、ショックを受けるだろう。部屋に戻りPCのスイッチを入れて起動させて、英国時間を確認すると14時だ。恐らく美桜は絶賛仕事中だと推測。


「六花、美桜と喋る?」


「喋るー」


Webカメラを付けて、美桜を呼び出すと直ぐに出て来た。


『あー病人だ!』


椅子に六花を座らせ、背もたれに手を突いてカメラを覗きこむ。


「元気だよ、30分程前にかぁさん着いたから」


『嵐のように、飛行機飛び乗って行ったわー。元気そうで何より。』


「いやその前に、電話確認とか手段はなかったか?」


その言葉に、六花がプと噴き出す。


「キャロラインさん心配だったのよ」


「暫くこっちに滞在するから、それ言っておこうと思って。なんとか出来るか?」


『大丈夫よぉ、重要な所はもう終わってるし♪お土産だけ、お母さんに持たせてね?』


ヒラヒラと手を振って、カメラは切れた。

予想だにしなかった来客だが、明日から暫くは賑やかだと話しながら就寝した。

海を渡って、母はやってきましたぞー。

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