はじめてのおとまり。 ④
島原の町に到着し、いずみとまさるの案内で色々周る。
意外と寒いにも関わらず観光客が多く、土産物屋に入って出てこない女子を待ちながら、悠人とまさるがアチコチ周って時間調整。
「島原ってキリシタン狩りがあったんでしょ、良かったねー今の時代に産まれて」
「ほんとだねぇ、僕狩られていたかも」
別にキリスト教じゃないけどと笑い、島原城を見上げて周囲を回る。
美肌になる清水を、ガブガブ飲む女性陣とそれを指で顔に塗る悠人を、まさるが笑ってひしゃくに残った微量の水を顔に掛ける。
なんだかんだと観光し、気が付けば15時になっていたので夕飯に間に合うよう撤収。
庭に車を付けると、見慣れない車があり家に入り叔母に帰宅した旨を伝えると、荷物を置きに部屋に戻る悠人と台所に向かう六花。
「ごめんねー、ウチの子達がお邪魔しちゃって。」
ワシワシと野菜を洗いながら、楽しかったと告げると叔母は嬉しそうに笑う。
遠くで「うひゃ」とか聞こえ、ドタドタと足音が近づいてくる。
「あんた、外人さんがいるわよ!」
「あ、マリ叔母ちゃんこんちは」
マリと言う叔母は妹らしく、六花を見るとショートカットの髪をワシワシしながら、ひさしぶりと笑う。
「外人さんは、六花ちゃんの彼氏だよ。和奈城さんって言うんだからね、あんたちゃんと挨拶しときなさいよ。」
「びっくりしたわー、仏間に行こうとしたら部屋から車に荷物運んでるんだもん。泥棒かと。」
マリ叔母は自身の孫を連れてきており、中学生と小学生の姉妹がポチの世話をしているらしい。
由利と茉莉の姉妹なのだが、思いっきり思春期で警戒しまくりだそう。
夕飯が準備でき悠人を探すと、祖母と2人で干している玉ねぎの整理をしている。
結構な高さに干しているので、屋内で干すにしては便利だが取り込むのに大変らしく、あっちやこっちとひもでくくり付けて行く作業を悠人がしている。
「おばあちゃんこれでおわり?」
「終わりだよ、ありがとーねぇ。孫は手伝わんし、息子や娘は仕事だからいつか頼もうと思ってたんだよ」
冷たい水で洗う作業も、祖母を座らせて悠人が代わりにする。それを見て祖母は嬉しそうに手を合わせて喜ぶのだ。
「なにしてんの?」
いずみとさとるが、六花の横から見る。
「おばーちゃん、喜んでるなぁって。」
「あんなに喜んでいるの、初めて見たかも…。」
ぽつりと、いずみの漏らした言葉に3人で頷く。
「もう帰るんかぁ?」
翌朝荷物を車に積んでいると、寂しそうな顔した祖母がひょっこりやってきた。
朝一番に山の墓場に行き、墓参りを済ませての事だ。
「ごめんね、明日ゆくりして明後日から仕事なの。」
「もっとゆっくりおいでよ、なぁーんもないけどね。」
土産だと、自家製の野菜を山盛りに入れた袋を、幾つも箱に入れてくれる。
きっと飛行機だっていうのを、綺麗に忘れているのだろう。野菜に一杯込められている気持ちが、2人には嬉しかった。
「和奈城さん、春休みに遊びにいっていい?!」
いずみとさとるが走って来て一番に言う、それを聞いて後ろに居る叔父と叔母を見れば笑っている。
「お父さんとお母さんの許可、ちゃんと貰った?」
「貰った!丁度1月後に春休みだもん、中学も高校も休みだし。」
「ちゃんとパンツの替え持っておいで」
悠人の言葉に、まさるは破顔する。
携帯番号の入った名刺を渡し、他に日程が決まれば連絡するように約束して、マリや他の孫と挨拶して東京に戻る。
「って訳で、明日には長崎産の野菜が到着予定。」
デジカメの写真を見て、蒼太やレオンにアーネストも楽しみにする。
「ばぁちゃん、優しそう…。うちのローズさんとは偉い違いだわ」
その言葉には苦笑するが、一族を纏めている責任があるのでローズの場合は仕方がない。
「中学と高校が来て、楽しめるとこってどこだ?」
レオンがガイドブックあったかと、アーネストと相談し。
六花はどの部屋にお泊まりして貰おうか、家政婦とキャッキャと騒ぐのであった。
長崎編おーわーり。




