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櫻の樹の下で  作者: 赤司 恭
櫻の樹の下で、君と出会った。
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はじめてのおとまり。 ③


鳥の鳴き声で目が覚めて、腰を抱いている感触で六花はまだ悠人が起きていないと思って、掛け布団から顔をだした。


青と緑の目が開いており、目を細めて「オハヨ」と小さく囁く。


「おはよぉ」


シィと、唇を人差し指で抑えられる。


「おばあちゃんが、さっき外に行ったよ。」


「畑だよ、お向かいの山の上にあるの。」


ニヤと笑った気がして、朝にしては濃いキスをする。


リップ音と水音と、息継ぎが静かな朝の部屋に響き、どこかの部屋で小さく物音がすると名残惜しそうに、悠人が離れて六花の唇を拭う。


「よく考えたらね、僕キス魔なんだよね。こっちに来たら、衆人環視みたいになってなかなかできない…。」


「我慢だよ~、家に帰ったら解禁って事で♪ね?」


ぎゅぅぅと抱きしめられて、クスクスと笑う六花。




「おはよう、良く寝れたかい?」


和食の朝が並んでおり、叔母の言葉に悠人は笑顔で頷く。


「鳥の鳴き声が凄いですよね、前が山だからですか?」


「もうちょっとしたら、ウグイスが飛んでくるんだけどね。今年産まれたウグイスは、も~ヘタなのよ?ホーホケキョってなかなか言わないの。」


4月後半に、上手に鳴けると聞いて悠人は驚く。産まれたときから、上手に鳴くのではないのだ。


「ケキョケキョ鳴くよ、和奈城君も山に入ったら聞いてみたら?」


まさるが先に朝食を食べていて、話を聞いている。


「そうしてみます、ウチも飛んできているのかな?」



そうこうしているうちに、朝食を平らげ部屋に戻り寝起きのストレッチをしていると、縁側の硝子と障子が開いて叔父が顔を出し、軟体な悠人を見て驚く。


「柔らかいな~」


開脚して前にペターっと倒れ切ると、叔父は大爆笑だ。そこに六花が来て、水を薬を渡す。プチプチと錠剤をパッキンから取り出し、次々と口に放り込んでいく。

ゴミとコップを持って台所に行くのを、六花が見送ると叔父が声を小さくする。


「アレか?昨日言ってた胃が悪いってヤツかい?」


「悪いってか、悪かったって言うか…、入院してたの胃潰瘍でね。血ぃ吐いてトイレが血の海だったのを、見つけた時は心臓止まりそうだったよ」


うへぇと言う顔をして、昨日のお酒は大丈夫だったのかと心配する叔父に、もうすぐ職場復帰するから大丈夫だよと笑う。


「こら、辛気臭い話をするのは、六花か?」


コメカミに関節を当てられ、グリグリさせるのを逃げる。


「痛い痛い~、ごめん。」


「和奈城君大丈夫なのか?」


「大丈夫です、検査してますし。もう胃カメラ3回も飲んでるんですよ」


割と綺麗な胃袋ですと、にっこり笑って言い放つ。




レンタカーを走らせ、島原城下を目指す。後部座席には、いずみとまさるが座っており親や友達と行く遊びとは違う雰囲気に、目を輝かせている。


「島原城の城下町ね、水路に鯉が泳いでいるの。私も友達と行って、楽しかったよ」


いずみの言葉に、じゃあ行ってみようと車を出したのだ。

途中セルフスタンドで給油し、トイレに行ったいずみと六花が遠くから悠人を見て「目立つねー」と笑う。


「待ち合わせの時は、直ぐに分かるよ?頭一つ出てるし」


「和奈城さんイケメンだから、視線凄いだろうなぁ…。」


「ちなみに双子だから、弟君もあんな感じよ」


「えーーーー、あの顔とスタイルがもう一人!?絶対六花ちゃんとこに、遊びに行く!嫌って言わないでね?」


「OKOK、大家がおいでって言ってるし、いつでもいいよ~」


クスクス笑って、車に戻るとまさるが「女はうるせー」と言い放ち、「賑やかでいいじゃない?」と悠人が笑う。


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