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櫻の樹の下で  作者: 赤司 恭
櫻の樹の下で、君と出会った。
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しろいかれとぼく。

渡辺氏との出会い話。

病人と自宅ワークの、会話形式。


ボンヤリと縁側で足を組んで、庭木を見ていると裏手の方からガサガサと聞こえて庭木の上の辺りから、プラチナブロンドが見えた。


「おはよ」


「おはよう、早起きだな。病人はダラダラするもんじゃないのか?」


早春の庭を見回ったのか、レオンの手には気の早いスイセンが何本も握られており、家政婦を呼んで花瓶に活けるよう言い渡す。


「まぁ来週には、職場復帰しようと思うけどね。」


「昨日の弁護士だけど、いつ知り合った?」


その言葉に、悠人はプと笑う。


「早くに来たと思えば、それが気になったんだ?」


始終一緒にいるのに、いつの間にか弁護士を変えていた事にレオンは気になっていたのだろう。


「…親父が死んだじゃない?20の時。」


悠人の父は20歳の時に、交通事故で急死した。さして取りみだしもせずに、淡々と葬儀の手続きをして硝子のような目で参列者を見ていたのをレオンは、記憶していた。


「何かあったのか?」


「もともと和慎の顧問弁護士が、ウチの弁護士もしていたんだけど。親子2代で仕えてくれて、親父は気に入っていたんだけど…」


明細が、破格に高いような気がした――そう、悠人は小声で言った。


「弁護士って定価があってないようなもんだろう?」


「でも、疑問に思ったら調べるでしょう?相場ってヤツを。」


実際悠人が内密に出した見積もりと、その当時和奈城の弁護士が出した金額では3倍近い金額があった。


「3倍かよ…、ふっかけたな。」


「親父も坊っちゃんだし、親子で弁護士ってヤツに信用したんだと思う。」


悠人の父の葬儀の日、弁護士が相続の手続きやら何やらをしましょうと言ってきた。既に息子の代になっていて、40歳過ぎのいかめしい顔の弁護士が提示した金額に一層不審を覚え手続きを延期して、和慎の常務になりたての松永に『もっとましな弁護士はいないのか?』と言ったらとある弁護士事務所を紹介された。


「そこで会ったのが、渡辺のお爺さんでね。事務のおねーちゃんだと思ったのが、くだんの孫渡辺でねぇ。」


「相続一式まるっとして貰って、だいたいの見積もりがやっぱり1/3で。やっぱりウチの弁護士解雇だなぁって確信したんだけど、手付金の話をしたら怒られて。」


「怒られる?」


弁護士を依頼するには、手付金と成功報酬と両方払うのが一般的だ。

レオンは目を丸くして、悠人の言葉を待つ。


「金目当てでするんじゃねー!って、仕事ちゃんとするんできっちり評価してくれ!って孫渡辺が、キィキィ言うから…。」


ククク…と、思い出し笑いする悠人を呆れた目で見る。


「そんな弁護士聞いた事ない」


「松永も祖父の方を紹介したかったんだろうけど、その人が孫にやらせてくれって言うから…。今思えば、大当たりを引いたね。僕も外見で奇異に見られる事あったし、渡辺もアルビノってのを背負ってるだろう?同族相憐れむって訳じゃないけど、お願いしようって思ってそのままだね。」


「7年前で弁護士?孫渡辺ヤツは、幾つだ?」


「35歳だよ、そろそろ結婚しろって言ってるんだけどね。20歳前後に見えるだろう?」


長年仕えて来た弁護士親子を解雇するに辺り、孫渡辺と相当睨みあいがあったらしいが、悠人が仕事に対する疑問点を並べると慇懃無礼な態度で席を辞した。


その後弁護士親子は、余所の顧問弁護士に納まったが良い噂は立たず、今は顧客獲得に苦労してると聞いている。


「んで?爺さん渡辺は、ご健在?」


「元気ハツラツ、今年80歳っておっしゃってたかな?もう引退されたけどねぇ」


お茶にしませんか?と声が掛かり、2人は屋敷の奥へと入って行く。



退院して10日目の朝の話。

人ンの花を、むしる男…レオン(笑)


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