みている。 ②
「ヴィが倒れた?!」
六花はコクコクと頷き、アーネストに今朝朝食後に倒れたと告げると悠人の書類箱を東に渡し、今日は早退すると書類を提出した。
「私もびっくりして、トイレで吐いていたの。便器が真っ赤で…、凄く凄く苦しそうなの。今は寝てる、だからもう病院に戻るね?」
後の手続きはしておくと東が言うと、安心したように六花が笑う。
「蒼太君が下にいるから、もし仕事で何かあれば連絡ください。」
ペコリと頭を下げて、パタパタと走っていく姿を開発課と2課が見送る。
「何があったんだ?」
東の問いに、アーネストは首を振る。
「俺もレオンも、心当たりないんだよ。アイツ…何があったんだ。」
夕方の面会時に、レオンとアーネストと東で病院に向かえば、悠人は『特別室』にいると言われた。
最上階の病室のフロアには、エレベーターを出てすぐに受付がありそこしか出入り口がない。
免許証のコピーを取られ、面会の許可を貰うに10分はかかった。
「和奈城の面会か?」
アーネストが「よぅ」と、片手を上げたのは青山で鋭い目つきで東を見る。
「あ、東ヴィの補佐。」
「課長補佐の、東と申します。」
「青山だ、今目が覚めているから、悠人も待っている。」
カツカツと靴の音を鳴らす後ろに、東達が続いた。
一番奥の部屋、扉を開けると腕に何本かの点滴と通した悠人が、ゆっくりと入り口を振り向く。
「あー、悪いね。来て貰って。」
「血反吐吐いたって聞いたぞ?」
レオンが椅子を並べ、アーネストが勝手に冷蔵庫へ水を追加し、青山に指差され東は椅子に座る。
「胃潰瘍…かな?あと、体が弱っていると言ってたかな」
どこか他人事のように、薄く笑ってる悠人を心配そうに六花が見つめる。
「持って来たぞ」
ドアを開けたのは蒼太で、広い部屋に6人が椅子に座り悠人を囲む。
白い腕を伸ばし、蒼太の持ってきた封書とメモリスティックを受け取る。
「東には言ってなかったね、コレは青山。僕の秘書をやって貰ってる」
「秘書?」
蒼太がリモコンで悠人のベットを起き上がらせ、目線を合わした当たりで停止。
「そう、もう少し先に言うつもりだったけど。僕は今の会社を来年には辞める。」
「本当か!?」
「本当、和奈城の稼業を継ぐんだよ。和慎って会社なんだけどね、今は書類運びを青山にやらせて、SEとの2足のワラジだったんだけど。」
和慎は大きく、聞いた事ない人はないだろうと言う規模だ。
「悠人は、和慎の会長となる。」
青山の言葉に、目を丸くさせているのを悠人が面白そうな顔して、笑う。
「さて、本題に入ろうか。」
そう言うと、悠人の封書を持って青山が説明を始めた。
「ざっくり言うと、悠人はストーカー被害に遭っている。」
封書の中身はメモリスティックの印刷で、100枚はありそうな束。写真のプリント。
「これと言って、実害は無かったんだけどね。精神的にキタってヤツ、こんなの警察じゃ解決してくれないから」
ペラペラと印刷の束をめくる。
「この犯人さんは、僕だけじゃない六花にも標的を定めそうになったから…。東、君は犯罪者が以前勤めていた会社に、勤務するのは嫌かな?」
その意味するのを、少し考えて首を振る。
「では、警察に働いて貰えるようお願いしてくる」
青山が書類の束を持って、病室から出て行くのを一同見送った。
「まぁとりあえず、体を治す事を最優先にな。」
ポフと悠人の頭を撫で、レオンが苦笑する。
「やわな体だよ全く」
苦笑した所に、受付をしていた看護師が面会時間終了ですと、迎えに来た。
付き添いで申請している六花は、悠人の部屋の隣に小さな部屋があり、そこで付き添いの人間が寝れるようになっている。
血を吐いたのは胃壁に穴が開きそうになる位、胃が薄くなっているわけで食事はもちろん駄目。
ある程度までは断食で、点滴が主な食事となる。
今朝運ばれて来た悠人は、到着早々内視鏡の手術となり輸血も一緒にした。
もともと白いのに、血圧が下がったりすると尚更白くなり、このまま死んでしまうのでは?と六花は何度も思い悠人の手を握り続けた。
腕には色々な役目の点滴が数本刺さり、頭上のフックにぶら下がる点滴液につながる。
「早く元気になってね?」
「元気になるよ、1週間位が目安って言っていたからね。あさってには、水が飲めるとか聞いたから、点滴も取れる」
「六花?」
「ん?」
「ストーカー捕まえて貰うから、犯人は絶対許さない。特別室に移動したのは、出入りが凄く厳しいからね。ここにいれば、きっと大丈夫だから…。」




