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櫻の樹の下で  作者: 赤司 恭
櫻の樹の下で、君と出会った。
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わなじょうさんチのねんまつねんし③


翌朝は7時に起きて、葉山と加藤に年始の挨拶をしてから5人で朝食。


「俺今日も、着もの着た方がいい?」


ちらーっと見てくるのを見て、流石に悠人も苦笑する。


「着たくないんだろう?いいよ、僕と六花で着るから」


クスクスと女性陣が笑い、苦しいんだよっと照れたように言う蒼太が言い残し、TVを見るために部屋を出て行った。


「ま・仕方ないか、六花食べたら着替えるから」


「はーい」





「苦しくない?」


「うん、大丈夫」


シュルシュルと紐と着ものが擦れる音がして、アップにして化粧をした六花がおとなしく立ってされるがまま。


帯を持つ手伝いをして、ゴソゴソと帯を纏める音がしてぐっと締められた。


「あう」


「きつい?」


「ダイジョーブ」


「座るときは、正座する時に端を手で差し込んで…そうそう、上手」



チラリと時計を見れば、着付けをスタートさせて30分。手際が良いのだ、客が来る時間はだいたい10時位なのでまだ30分程時間があまっている。


その時間に、着ものの作法を受けてフンフンと覚える。


「もう口紅塗って良い?」


着ものに付いたら駄目なのでと、着付け前にしないように言われていたのだ。

ちゅ…と、唇が合わさって悠人の手が、六花の口紅を持った手と口紅ごと握りこむ。


「手数料、貰わないとね?」


「いま?」


再び唇が合わさって、リップ音が響く。

ふと顔を上げて唇を拭えば、どうぞと口紅を手渡す。

その行動と、障子が叩かれるのが同時だった。


「旦那様、お客様がいらっしゃいましたよ。」


「…凄い勘」


「お褒めにあずかり、光栄です。さて行こうか…立てる?」





広い座敷は、着ものを着た部屋より裏寄りで少し歩いた先にある。

渡り廊下を渡りきって、進めば賑やかな声が響いていた。


「おぉ悠人君、あけましておめでとうございます。」


「皆さま、あけましておめでとうございます。」


部屋の入り口で、さっと正座して丁寧に礼をして入る。六花もそれにならって、頭を下げれば部屋の中にいた数人が「まぁまぁ」と慌てる。


「そのお嬢さんが、婚約した?」


「斎藤六花と申します」


六花の父よりまだ年が上そうな男性が、何人もいて目を細めて六花を見る。


「可愛らしいお嬢さんだね、悠人さんをサポートしてあげてください。」


「はい、微力ながら精いっぱいお手伝いしたいと思っています。」


六花が部屋を見渡せば、部屋の奥で既に蒼太は数人の若い女性に囲まれ、真っ赤になってお酒を飲んでいるようだ。


「蒼太君がピンチかも?」


「大丈夫、赤くなるけど僕と蒼太はウワバミだから。アイツ潰すには、2夜掛かる。」


ヒソと話をして、どんな酒豪よと内心突っ込む。


全くわかない対人関係に、男女問わず六花の前に来て新年のあいさつをして、どこそこの会社の誰だの悠人のアドバイスを受けて挨拶をすること3時間。


挨拶だけの人は殆ど帰り、残っているのは親せきなのだがそれでも半分は残って加藤や葉山の作ったオードブルや、おせちに舌鼓を打つ。


あらかた帰ったのは、夕方18時を過ぎた頃だ。



「はー…疲れた」


足がっ…と、畳に爪を立ててしびれを堪え。くずした足をベシベシ叩いて、血行促進。


横で平気な顔をしている悠人が、小さく笑って足を突こうと人差し指を六花に向けるが、やられてたまるかと小さく攻防する。


そんな仕草を、親せき筋は遠目で”微笑ましいわぁ”と温い視線で見守る。


最終的に親せき筋が帰宅したのは、それから2時間後の事でお酒を勧めらるままに飲む悠人は、赤くもならず全て飲み干しケロリとしている。


一方六花は、下戸だと最初に公表したので殆ど酒はこなかったが、それでもチューハイやらワインやら注いでくる親せきに、一口だけ飲んであとは後ろに隠し持っていたバケツに捨てて対処していた。


その後蒼太は、忍とその友人達と遊びに出かけ、寝正月な赤鬼と白熊は2日に家へ来ると連絡があった。

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