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櫻の樹の下で  作者: 赤司 恭
櫻の樹の下で、君と出会った。
32/158

おやすみなさい。

ショートな単発。

12月、寒さが厳しくなり始めた頃に社内で健康診断があった。


手の空いている人間から順番に受けたとは、悠人も記憶していたのだが…。


1週間後、手元に来た報告書を見て固まった…。



「過労って書いてある…。」


どれどれと、課の人間が面白がって覗き込み報告書をとりあげる。


「えーっと?悠人・ヴィンセント・ウォーレス・和奈城…、身長185・体重60?ほそーっ!体脂肪10%…。どこのアスリートだ!? あー、ここだここ先生の御言葉ってヤツ『血液成分より過労気味』課長!血に何混ざってたんですか?」


「知らん」


「睡眠不足とかじゃないのか?持ち帰りの仕事とかしてるだろ?斎藤さんどう?」


ワラワラ集まってきた人間に囲まれ、東に突然話を振られてぎょっとする。


「え?たまにしているみたいですけど…、結果論なので止めれなくてスイマセン…。」


「はいはい、早寝早起きしますよっと。僕会議行くから、後よろしく」


ヒラヒラと手を振って部屋を出て行く悠人を、心配そうに見送る六花だった。



各課の課長が集まる会議は、年度末の進行を調整するもので顔見知り過ぎるメンバーが15人程集まる。


「和奈城聞いたぞ~、過労だって?」


嫌そうな顔さえても、他の人間は気にしない。


「なんか変な成分が、血に混じってたとか言ってたかな?」


ペラペラと書類をめくりながら、明日の天気を言うような口調。


「自分の事なのに、疑問形?」


「和奈城、恐ろしい子」


口角を上げるだけの笑みを浮かべ、じきやってきた進行役によって会議は進む。


既に決まっていた事を確認しながらの会議だったので、特に長引く事もなく3時間程で終了した。




「僕は不健康かな?」


風呂上がりのストレッチをしながら、雑誌を呼んでいる六花に問えば曖昧な笑顔が戻ってきた。


「不健康って言うか…健康なんだけど、根詰めすぎかな?そんなに睡眠削る事ないんじゃないかなって思うよ?」


事実六花が寝てから、仕事をしているのは分かっている事だ。納期もそんなに迫って居ないのなら、就寝して目なり体なり休ませるべきだ。


「そうか…。」


「無理しているように、私達から見えるよ?体が資本なんだから、ね?寝よう?」


恐らく六花が知らない悠人の社会人生活は、きっとこのスタイルで培ってきたのだろう。いままではいい、これから先が心配だ。


雑誌をラックに戻し、ベットに腰かけるとポンポンと横を叩く。


渋々と言った顔で、ノートパソコンを一撫でして六花の横に寝転んで、黒い長い髪を弄ぶ。

ゆっくり動く手をそのままにしていると、じきに動かなくなり規則正しい寝息が聞こえてくる。



真夜中に目を覚まし、寝ている六花をそのままに半身を起してカーテンを少し開ける。

月の光で、薄く庭の樹木が浮き上がり真夜中だと言うのに、明かりの点いてる家もあるのが分かった。


「ヴィ…?」


「ん?」


目だけ開けて、六花がじっと見ていた。


「ああごめん、まぶしかった?」


「ううん、目が覚めただけ。何か見える?」


横に座って、窓から見える景色を同じように見る。


「町だね?ヴィって月の光浴びてると、すっごく綺麗よ?」


「ちょっと白いけどね」


小さく笑ってゆっくりとカーテンを閉め、明日も仕事でしょうと睡眠を促される。




―――おやすみ。

PCを使うと、ブルーライトってのが照り返して目にきます。

長時間目を使い過ぎると、半年で視力ガタ落ち(経験済)。


なので、睡眠もお仕事で。

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