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櫻の樹の下で  作者: 赤司 恭
櫻の樹の下で、君と出会った。
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ひこうしょうねんとぼく。

翌日定時に仕事を終了させ、六花とは別行動でとある場所に向かう。


まだ明るい外をサクサクと下草を踏みしめて歩けば、目的の建物が見えてきてすれ違う少年少女達が、威勢のよい挨拶をしてくる。


「和田君いるかな?」


建物の玄関で、そこらにいた少年に聞けば「いらっしゃいます」と言うので、礼儀上ペコリと挨拶して入る。ずいずい歩けば、上下白いジャージでスキンヘッドのイカツイ…あまり近寄りたくない風体の男が、パイプ椅子に座っていた。


「ハイ」


「あ゛?…!!え?あ?先生っ!!」


ビョンと仕掛けおもちゃのように、パイプ椅子から飛び上がり直立不動。



「和奈城先生!お久しぶりです! おいおめーら、和奈城先生に椅子差し上げろー!」


「いい、いい…。練習続けて?なにこれ?和田君…このチョビヒゲ?」


アゴのところに、ちょっとだけあえて生やしてあるヒゲを、悠人は面白そうに引っ張る。


「あ!アイテテ、勘弁してください。剃ります、剃りますから。」


「相変わらず、教職者に見えない風体だね、もっと爽やかにできない?いや、爽やか…無理か父兄からクレーム来ないの?」


「た…たまに、新入生の頃は。」


パイプ椅子を抱えて来た女子生徒に、ありがとうと笑顔で答え和田の隣でゆるりと足を組む。


「先生?今日は何かご用件は?」


おぉと、思い出したように和田を見て笑む。


「ウチの門下生がね、昇段試合に出るからちょっとこっちの練習に試合当日まで混ぜてもらえないかなって。お願いにあがりました。」


ペコリと頭を下げる悠人を見て、和田は真っ青になる。


「勘弁してください、先生が頭さげないでくださいぃぃぃ!了解です、そのお話はバッチリ受けますから!」



いかつく、怪しげな風体の和田だがかつて小学校から20年は、和奈城の道場にいたのだが途中中学からか高校までガッツリと非行の道に逸れ、当時の道場主だった悠人の父「かける」と悠人に、かなりガッチリ締められトラウマになるほど締めあげた御蔭で、無事更生し現在この高校の体育教師を務めている。


和田わだ まなぶ29歳、絶賛彼女募集中である。


普段は鬼のように厳しい和田だが、クラブの生徒には親しまれており少々荒っぽいが、何より生徒が非行に走る可能性は少ないと20名在籍する柔道部を任されている。


「最近どぅ?また時間があれば、後輩指導とか来てくれたら嬉しいよ?ここの生徒さんは、黒帯が多いねぇ和田君が頑張って教えて、ちゃんと吸収しているんだね。」


面白そうに目を細めて見る。


「もうコイツらの指導で、精一杯ッス!教えた分吸収して、成長してくれるのが面白いですねー」


生徒を褒められ、和田も嬉しくなり強面の顔で笑う。

19時の練習終了まで立ち会い、最後にと和田から振られる。



「えっと、和奈城です。この和田先生が通っていた道場の息子です、今度から少しの間うちの道場の門下生が、皆さんの胸を借りて練習に参加させてほしいので昇段試験までの間宜しくお願いします。」


「和奈城先生は、6段保持されてらっしゃるから次来られたら、ウチの生徒に胸貸してくださいね?」


ちゃっかりお返しされて、苦笑するが快諾した。


車で送るとの申し出を、やんわりと断って電車で帰る。次は何があっただろうか?頭の中で整理しながら、順序良く解決していかないとややこしくて仕方ない。


とりあえずは、昨日の門下生に交流練習の連絡をメールし、ついでに和田の連絡先も添付する。電車に揺られて、睡魔が居座った。


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