あなたはわたしのもの。
前作の続きみたいな、小話デス。
ふふっと、微かに笑う。口角が僅かに上がっただけなので、良く見ていないと分から無い程度。
「ご機嫌なのね?」
目線を向ければ、席に座ろうとしている―――悠人の勤務先近所の、オープンカフェ。
「ちょっとね、久しぶりに自分の会社に行ってきたよ」
「ふぅん?思い出し笑いする位に?」
唇を突きだして、スネたふりする六花に緩く笑う。
「久しぶりに親父の部下に会ったんだよ、今は常務になっているけどね。良くウチに出入りしていたから、親父に叱られてる僕をかばってくれたんだよ。それを思い出した。」
「そうなんだ~?子供の頃の写真、今度見せてね?」
小首を傾げてお願いする仕草に、あっさりと首を縦に振った。
午前中六花は実家に行き、英国土産を手渡してきた。その間の時間潰しに、社に行ったのだ待ち合わせのカフェでは片割れの弟がどう動けばいいか、色々とシュミレートしていた。
その姿を、周囲に座る女性客が色々な目線で見ていたが、六花が表れて視線は半減。指を絡ませて歩き始めたのを見て、残りの視線は壊滅した。
パチンと、小さな日傘を差す。クリーム色の傘に、パステルカラーの色糸を使い、小花が散るデザインはUV加工もバッチリしており、日焼けを心配する六花には手放せない。
「日傘すると、顔が見えない…。」
「傘ごと上向くから…ね?染みは増やしたくないもの。」
からめた指をきゅっと握り、仕方ないな…と嘆息した。
「白人さんて、日差しの強い場所歩くけど日焼けしないの?」
「あぁ、耐性があるんだよ。白人の皮膚は強靭でね、皮膚手術も白人のやりかたそのままを、日本人にするとダメージが酷いんだ。優性遺伝で、ソバカスになる人もいるけどね」
親がソバカスなら、子供もソバカスになりやすいのだ。総じて日焼けしても、赤くなる人間に多いらしい。
タイムズに止めてあった車に乗り込み、割と順調よく車が流れたために早く帰宅できた。
自室に戻り、部屋着に着替えた六花が悠人の寝室を訪れた時には、愛用のPCが立ち上げてあってその前に座り考え込んでいる。
「お仕事?」
「うん?いや…メール受けたら、面倒な仕事の連絡。」
カチとPCをダウンさせ、ラグに座る。
「もうじき就職活動の時期でしょ?もうしている会社もあるけど、基本ウチは9月からだから。」
六花も就職活動で、何社か受けた記憶は去年ある。フムフムと頷いて、隣の悠人を促せば困った顔。
「面接、立ち会え…みたいなのが来た。ウチ万年忙しいんだけどね、言う分こっちに人材まわして貰おうかな?六花、後輩…要る?」
「愛梨さんは、必要だ―って騒いでいたけど?」
同じくSEの補佐的な事務をしている愛梨は、他の補佐とそう言っているらしい。
「ま・明日考えようか?」
そう言うと、嬉しそうに笑って六花は悠人を見上げた。
休みの日に、仕事の話はご法度…。




