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16 カタギなのにシャバの空気が美味い

 妹から外出禁止令が出てからはや4日目

 そろそろほとぼりが冷めてきた辺りで、俺は今妹の部屋にいる。


「今回の配信の戦闘中のアーカイブ使って切り抜き編集しといたから見て。」

「なんで俺の知らない間に事が進められてるんだろうなぁ!?」


 ってかお前、貯金箱作ってる暇があったら俺に許可取りに来いよ!


「いつの間に録画ファイル回収されてた?」

「そんなの、お兄ちゃんがトイレ行ってる間律儀に机においてあるスマホをちゃちゃっとすれば…」

「これ法廷で訴えたら勝てるよね?」


 プライバシーって知らんのか。

 パスワード変えるかぁ。…31523(さいこう兄さん)とか。

 ふっふっふっ。恥ずかしくて出来るわけもないだろう…


「というか、お兄ちゃんのあのアカウントで投稿するね。」

「はぁ。もう好きにしてくれ」


 もう半ば諦めだ。

 …本当に兄のことなんだと思ってるんだよ。

 金づるとしか思ってないんじゃないか?


「そうそう、そろそろ外出たいんだがまだだめか?」

「ダメ。課題でもしておきなさいよ」

「課題に詰まったから外出したいんだよ」

「詰まったらそこを学習しなさいよ」

「そっから逃げるために外出したいんだよ!」


 はぁ? そんなめんどくさいこと出来るかボケ。

 外出て呑気に散歩ぐらいさせろよ! 最近運動不足気味なんだよ。


「俺の青春を奪いやがって…」

「彼女居ない暦=年齢のくせに何言ってんのよ」

「リア充=青春じゃねぇよ!」


 変な方程式立ってんじゃねぇか。 そもそも何だよ連立方程式って。

 3次関数とかなにあれ? 呪文? y = ax³ + bx² + cx + d(a ≠ 0) ??

 俺の脳みそがエラー吐いてるよ。


「リア充=爆発だろうが」

「それもそれでおかしいでしょ!」


 はっ、これは世界中で広まっている公式なんだ!

 数学は共通言語だってね!


 母国語すら法則を理解していない俺はじゃあなんなんだ…?

 品詞を覚えるだけで瀕死になってる。 なんつって!


「あら? エアコン壊れたかしら?」

「思考で空気が寒くなったんだが…」


 心底どうでもいい話ばっかりだな…


「そうそう、この動画で収益化条件達成するから。」

「え?」

「あれ? 切り抜きすでに一本投稿しているの知らなかったっけ?」

「聞いてねぇよそんなの!」


 あーもう、一度俺を通せよ。

 なんだこのマネージャー。


「収益は全部私のものでいい?」

「俺が一生配信をしないっていう条件でいいなら。」

「やっぱり半々で!」

「7:3だ。」

「6:4!」

「はぁ。まぁそれでいいよ。」


 正直、配信するのも同接が増えれば嬉しいんだけどな。

 今回の配信に関しては、ちょっと別の理由で同接が増えたからなんかなぁ…って感じなんだよな。


 まぁ、今後はこいつすげぇぇぇ!って思ってもらえるような配信したいけどな。


「そうそう、投げ銭解禁されたら、雑談配信でもしたら?」

「なんでそんな事しなきゃいけないんだよ。」

「え? だって話してて面白いんだから。」

「見ず知らずの相手と談笑なんか出来るかよ。」


 配信なんてそんなもんだろ。視聴者との交流も程々にしといたほうがさ。

 ダンジョン配信とか命がけの中でやってんだから。


「そうそう、カメラワークが凄すぎて、あの時の戦闘がなぜか映画風の戦闘になってたよ。」

「カメラワーク? あのキューブか。」


 戦闘中は全く気にならなかったな。どこにいたんだよあいつ。


「ってか何だよなぜかって。」

「いやぁ、お兄ちゃんがかっこよく見える日が来るとは思ってなかったらさ。」

「なんだよそれ。」


 俺はいつもかっこいいだろうが。

 ファンサならいつでもしてやるぞ?


「とりあえず、投稿するね。」

「へい」

「とりあえず、収益化の条件には達成しているはずだから審査を送るね」

「もう好きにしろ」


 俺にはわからん。呪文唱えてるようにしか聞こえん。


「お兄ちゃんは脳死で配信しといてね。」

「…はぁ…」


 俺はそのまま部屋からでた。

 何かしらボケる気力すら無くなってきた。





 そして外出禁止が出て一週間が経った。


「あー… 課題終わっちまったじゃねぇか。」


 暇すぎて課題やってたら、わからないところが出てきて妹に聞いたりを繰り返してたらいつの間にか終わってしまった。

 作文も、中身は酷いが書いたんだから問題ないだろ。

 読んでない作品のあらすじを読んだ感想みたいな感じになってるけど。


「本気で暇になってきたな…」


 最終手段だった課題さえも終わったら、もうあとすることが無くなった。

 夏休みはまだあと2週間も残ってるんだぞ?

 お盆家にいて終わったからな? ふざけんなぁ!


 俺だってプールとか海行って遊びてぇよ!

 光がSNSに上げている写真見て常に殺意沸いてたわ!


 …でも最終的にはダンジョンで一日潰してる可能性のほうが高いか。


「未だに魔石の反応もないし、長門も性能を本気で試したいからなぁ…」


 魔石に関しては、投げたり振ったり叩いたり穴あけようとしたりしたが、一向に反応がない。

 …舐めるとか食べるとかは論外。…万が一体から触手生えてきたらどうするんだよ。

 なんだ? 触手プレイをしろってか?

 すまんが俺にそういう趣味はないんだ。諦めてくれ。


 長門に関しても、アイテムドロワーに入っている時は効果を発揮しないみたいなんだよなあ。

 まぁ、常に速度が3倍とかだったらちょっと生活がしづらいからなぁ。


 …壁に激突しても防御力上がってるから俺は無傷で壁のほうがダメージ受けるんだよな。(経験済み)


 本当に、ゲームばっかりしてても飽きるものは飽きる。

 ドーパミンが不足してきた。


 スライムを倒してもドーパミンを感じにくくなってきたし、次の階層に潜ってみるのもありかもな。

 スライムを積極的に倒すのは、命の危険なくお金を稼ぎたい人だけで、それ以降はリスクとリターンが吊り上がっていくみたいだ。


 まぁ、角兎とか結構怖そうだもんなぁ。後ろから接近してジャンプでズドッ チーン(死)なんて有り得るからなぁ。


「平和すぎて暇だぁ…」


 …ショートでも見るかぁ…


ガチャッ


 ドアが開いて妹が入ってくる。

 ノックぐらいしろよ! 良かったな。俺がショートを見ようとしているだけで!

 タイミング悪かったらどうなっていたことやら。


「お兄ちゃん」

「なんだ?」

「外出オッケー」

「……――――よっしゃあぁぁあ!!!」

「うるっさいわよ!」


 やっとだぁ! この監獄から解放される!


「ダンジョン行ってくる!」

「ちょっと待ちなさいよ!」

「なんだよ。良いところだってのに。」


 せっかく俺が律儀にこれだけ我慢してたってのに。

 なぜだ? なぜ俺を妨害するんだ?


「配信と、金属バット、スワイプ禁止ね。」

「…は?」


 …俺のの楽しみがことごとく禁止されていく…!?


「だって正体がバレたら引きこもってた意味がないじゃない。」

「なんで俺がそこまで束縛されなきゃいけないんだよ!」


 なんだ? メンヘラ系彼女か?

 彼女出来たことねぇって言ってんだろうが!(八つ当たり)

 メンヘラでもいいから彼女くれ! …メンヘラはやめとこう。

 束縛されるのが一番キライだ! 動いてないと死ぬマグロなんだよ俺は!


「その代わり、…長門、だっけ? は、使っていいから。」

「えー… まぁいいかぁ…」


 結局言いくるめられるのが俺なんだよ…!

 なんか妹に主導権ずっと握られてるんだよ!


「じゃあまぁ…なんだ、ダンジョン行ってくる。」

「いてらー」


 なんでここは軽いんだよ。ダンジョン行くことは制限しないのが温情なのか?

 まぁ、規制が3日前ぐらいに解除されて人も増えたし、バレる確率が低いって思ってるんだろうか。


 まぁだが…


「―――いやっほい! 解放だぁ!」


 俺は家の前でそんな事を叫んだ。…多分近所迷惑。


「あー、シャバの空気がウメェ… 刑期満了した犯罪者の気分だぜ…」


 罪と罰の天秤が罰に偏りすぎてると思うけど。

 まぁとりあえず、久々のダンジョンに向かうか!

ちょっと今日は忙しいので一話で勘弁してください…

夏休み終わりの終わりももうすぐなので、今後は一日一話投稿になります。



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