第九話
「……まるで別人だ」
ここまでの私の話を聞いてそう呟いた校長はもとよりだが、教頭も平井先生も息を呑んでいた。虚構をみるような目でテーブルをみつめている。
「古宮さんが話して下さった過去の透花先生……お題を出す以前の彼女は、正しく私達が知っている女性です。ですが、それ以降は」
「信じられませんか?」
間髪入れずにそう問いかけた。
「いえ、信じたくはないですが、もう信じるしか」
たどたどしくも、ぽつりぽつりと呟く校長に「私がみたもの全てを今、話しています。だから信じて下さい」と目をみて言った。
「つい数十分前に、私が隣のクラスの子に透花先生が担任で羨ましいって。いつも笑い声が聴こえて楽しそうだねって言われたと話したことを覚えていますか?」
「ええ」
校長が頷くと、教頭と平井先生もそれに続いた。
「あれは、全て作り物だったんです。透花先生がいい先生であったという事は勿論事実ですが、クラス全員が仲良く、いつも笑い声で溢れている。私達のクラスは、そんないいものじゃありませんでした。皆が過去から目を背け、自分を偽り続けた結果生まれた黒い沼のようなものの上に作りあげられた幻想だったんです。それが、透花先生から出された二つ目のお題で全て浮き彫りになります」
当時のことを思い浮かべながら、私は深く息を吸った。
「一つ目のお題が出された翌日、透花先生は私達の目をみながらこう言いました。向かい合った相手を思いやる分だけ、髪の毛を引き抜いて下さい。それが、二つ目のお題でした」




