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第十話

  一つ目のお題が出された翌日、黒板には新しい座席表が張り出されていた。理沙と共に教室に入ると「小夜、席を確認してすぐに座りなさい」と透花先生に声をかけられる。すぐに座席表を確認し、席に座った。私は、最前列の左から三番目の席だった。


「これで全員が揃いました。何故席が変わったのか、皆が疑問に思っているでしょう」


 教壇に立つ透花先生は、私達に順に視線を配らせた。


「この席が示す意味。今からそれを教えます。この席順は、このクラスにおいての力関係を表しています」


 すぐさま、はあ?、意味わかんないだけど、と言った声が放たれるが、透花先生の耳には一切届いていないようだった。


「どこの学校、どこのクラスにもスクールカーストというものがあります。容姿や性格、その人のキャラクターや発言力、家族構成、親の仕事、などとそのピラミッドを形成するものは複雑かつ繊細なものですが、一度自分の位置が定まってしまうと中々抜け出せないという現状があります。なので、その全てを私の独断でひっくり返させて頂きました」 


 不満や戸惑いの声がうねりのように教室内を満たしていく。けれど、それを掻き消すように透花先生は力強く黒板を叩いた。


「これが、新しいピラミッドです。最前列の一番左端から右へと力の強さを表しています。つまりその席に座る大橋さんがこのクラスの頂点に、そして最後列の一番右端に座る中原さんがクラスの最下層の位置にいるという事になります」

「なにそれ、まじで意味分かんないわ。透花っち、まじでどうした? 頭イカれてんじゃない?」


 最下層だと名指しされた絵里奈は、ひどくそれが気に障ったようだった。


「中原さん」


 冷たい眼差しが絵里奈に向けられた。


「なに?」

「先日の、一つ目のお題ですが、あなたの結果は五分三十三秒でした。たったそれだけの時間しか雪を数えてないのです。それも、疲れたから、寒いからなどというくだらない理由で」

「あれに、なんの意味があんの? 雪なんか数えてなんの意味があるか教えろよ」


 絵里奈が机を蹴り上げたその瞬間、数人がびくっと身体を揺らした。透花先生は一切それに動じることなく、「中原さんより前の席に座っている方々、何も恐れる必要はありません。何故なら彼女はクラスの最下層です。気に食わなければ反論して構わないのです。それから中原さん、あなたは先程私にあれに何の意味があるのかという答えを求めてきたので、答えましょう。意味がないことなんて、ないんです。生きている限り、生きている間に行なった事は全て、あなたの知識となり血肉となり、糧となります。先日の雪を数えたというあの事実。あれは、体感温度0度の世界で約一時間立ったという経験、風に揺られた雪の動く様、冬の空気の匂い、寒さをどう耐えるかと思考を張り巡らせたという経験、などと五感全てで感じたもの全てがあなたの糧になったはずです。それを、感じたくたって出来ない人だっているんです。もう……二度と。生きることを冒涜しないで下さい」と諭した。


「じゃあ勝手にやってろよ。一生雪でも数えてろ」


 絵里奈が鞄を手にし、席から立ち上がったその瞬間、「調査書」という今までに聞いたことのない声量で透花先生が言った。扉に手をかけた絵里奈の身体がぴたりと止まる。


「二学期ももうすぐ終わります。あなた方は既に知ってるかとは思いますが、大学を受験する際には高校での成績や部活動、生活態度などの調査書を求められます。この段階での調査書は、あなた方の今後に大きく影響するはずです。私はあくまで授業の一環としてこれを行なっており、そしてその調査書を書く立場にいます。今、教室から出るという事は、この学年でのそれを放棄するという認識で宜しいですか?」


 透花先生の放ったその言葉に、絵里奈は舌打ちをし、乱雑に椅子を引いた。その姿をみて、透花先生はちいさく頷いた。

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