春の色 【月夜譚No.393】
掲載日:2026/03/15
春らしい色が増えてきた。桃色に黄色、若草色――暖かな色が街を鮮やかにする。
店頭の装飾を始め、行き交う人々の服装やアクセサリーも春色で、気分も浮き立つようだ。心なしか、皆の表情も明るいように見える。
今日下ろしたばかりの淡い空色のワンピースの裾を翻して、彼女は春先の道を歩く。人通りの多い賑やかな通りを歩くのも好きだが、やはりこの季節は気に入りの場所に行くに限る。
ヒールを鳴らしながら軽い足取りで階段を上ると、暖かな風と共に視界が一瞬だけ一色に染まる。
ひらひらとすぐ傍を舞う花弁につられて目を持ち上げる。空の青と桜のピンク。そのコントラストがとても綺麗で、彼女はそれを知っていたのに目を瞬かせた。
自然と頬を綻ばせ、思わず止まっていた足を踏み出す。
手に下げた鞄には、今朝早起きして作った弁当が入っている。好物ばかりを詰めたそれを楽しみにしつつ、正午になるまで座る場所を探しながら春の色をゆっくり楽しんだ。




