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第21話 ランチ営業はじめました

「おじさーん、会計出たよ。うわ臭っ、男子大学生ってこんなに臭いの?」

 ミミの顔がとてもゆがんだ。


「これ本当にノンアルコールビールなの?」

 店長はミミに確認を取った。


「楽しくて場酔いしたんだよ。もう二十二時前よ、こいつら全員終電で帰さないとこの店、簡易ホテルになっちゃうよ」


「それはそれで」


「正常な判断が出来ない者を無理に」

 ミミの声は冷たかった。


「分かったわよ。ほら、あんたも起こすの手伝って」

 大変な作業だったが、それなりに面白くなってタジンとゲラゲラ笑いながらみんなを起こした。


 あれもう終わりすか?

 マナちゃんは、どこ?

 ミミちゃん可愛いっすね、今度僕と飲みに行きませんか?


「起こすの協力してくれたら考える」

 マジすか、やりますやります。


 そう言われた一人が二人になり三人になった。


 十三人を起こす頃には二十三時を回ったところだった。

 六人がミミに連絡先を渡した。どうせバックヤードに貼られておしまいだ。


 全員がギリギリで間に合うタイミングで店を出た。

 バックヤードに行った店長が俺たちの帰り際、上裸にビキニパンツで出て来たところを見た。

 アイツ誰か食う気だっただろ。

 危なかった。



「じゃ、せんぱーい。おんなのことー、お幸せにー」

 ノンアルコールビールで酔っぱらった青年たちは大阪方面にそれぞれ帰って行った。タジンは京都方面だが急がずとも良かった。


「今日、楽しかったか?」

 タジンが主催をしたわけではないので、この質問が来たことに俺は少し驚いた。


「五」


「お、最高点か?」


「十が上限の五」

 タジンは口の端を引き上げて、そりゃそうかと言った。


「イベントが少なすぎた。そして濃厚だった」


「まぁな、次の電車で帰るわ」


「寝過ごすなよ。京都まで行ったら悲惨だよ、君」


「気をつけて帰るよ」

 ホームに最終の準急が入って来た。


「おいタジン」

 電車に乗り込もうとしたタジンを呼び止めた。


「来々軒楽しみにしているからな!」


「そりゃねぇ」

 よ。と、言いたかったようだが、扉が上手いこと閉まった。流石だね。


 次の日、ハーレクインバターの店長から電話がかかってきた。

 ちょっと来て欲しいという。

 ハーレクインバターはランチ営業を始めたらしい。

 お店の女の子が踏みましたうどんは人気で即完売だそうだ。変態どもめ。



「これさ、店長が踏んだでしょ」


「違うわよ。ミミが詐欺まがいなことしたらいつか客が離れるって言ってね。あの子が踏んでいるの。たくさんは作れないから、数量限定よ」

 ミミはここに就職する気なのか、止めとけって本気で言いたい。


「コシが無いって客には、女子大生が踏んでいるから力は込められないですって言ってやったわ。その客は切り方も覚束ないのはそのせいですねって納得して完飲よ」


 どうせ切ったのは店長だ。


「時給上げただろうな」


「馬鹿ね、私の店は時給千二百円交通費別よ。何、あんたそっちの方がマシって言いたいわけ?」


「別に、ここで働いても世界広がらなそうだし、それで呼び出した理由を手短に」


「マナはここを辞めた。あんたを追いかけるのに疲れたって、私は私だけの恋をしますって」


「よく言うよ。今回のは偽物の恋だったって」


「続きがあるの。最後に一回だけでいいから会いたいって」


「随分、身勝手だな」


「どうせ頬叩かれるやつよ」


「痛いの嫌なのだけど、期待持たせたく無いからパス」


「じゃ、店の電話でいいから声を聴かせてそれで最後にするからって、ミミ今なら大丈夫よ」


「おじさんタイミング早すぎ。気の毒だけど、十分後マナから電話入るからよろしくね」

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