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夕立の詩(うた)  作者: 富永真一
3/26

バイト先

3―1

 

 直樹は少年時代を地元の公立の小中学校で過ごし、高校は隣の市にある高校に進学した。部活動に打ち込むことも勉強に励むこともない味気ないその時期に、セイシュンという響きは似合わない。無論これといって目標などもなかった。偏差値五〇前後の高校で、中間レベルの成績だった直樹は現役ではどこにも合格せず、順当に浪人した。一年間の浪人生活の末、大学に入った。クラスの半数がそうだったことも気を楽にした。集団の中で目立たぬように意識して生きてきたつもりは無かったが、果敢に何かに冒険したり、人一倍努力したりすることもなかった。かといって何かで惨めな思いをしたり落ちこぼれたりすることもない無難な半生だったと思っていた、今までは。学生時代はいくつかのバイトに就いた。ティッシュ配りや居酒屋のホール、酒屋や魚屋、運搬される荷物の梱包、パン工場・・・・・・。その中で長続きしたのは酒屋と魚屋だった。個人経営の酒屋の店主に気に入られ、酒屋の経営が芳しくなくなりバイトを解雇された時に店主に紹介された先が、魚屋だった。


 酒屋「宮川」は大学の最寄り駅近くの商店街にあった。直樹はバイト募集の張り紙を見てしばらく悩んだ。「酒屋で働く自分」が、どこか親のすねを齧っている有様を連想させたからだ。言われぬ後ろめたさというか、敗北感というか、そんなものを感じたが、結局親しんだ雰囲気に誘われるようにして、その店で働き始め、仕事にもすぐに慣れた。店主の宮川茂吉には力仕事や在庫管理から発注まで商売のあらゆることを任された。直樹もその思いに応えるように汗をかいた。時給の支払われる時刻を過ぎても何かできる仕事を探し、例えば店先の掃き掃除なども進んでやって茂吉に喜ばれた。


              つづく


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