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夕立の詩(うた)  作者: 富永真一
11/26

二次会

 

 一次会がお開きになると、大人しい部員は家路に就く。三次会は酒好き、付き合い好きの馴染みのメンバーが顔を揃える様になるのも、これまでと同じだった。


男子学生はスーツのネクタイをいつの間にか外していたし、卒業式に決めていた和装の女子部員たちの大半は着物が窮屈だと先に帰ったが、残っていた女子たちの着崩す様が何か艶めかしく、普段の二次会とは少し違う自堕落な空気が漂いだしていた。


「なあ、直樹はどうして就職しなかったんだ?」どこからともなくそんな声が聞こえる。


「どこかの企業に入れるはずだったんじゃないのか?」もちろん聞こえてはいるが、上の空で聞き流すのも雰囲気を壊すので、適当に返事をする。


「『働いたら負け』って嘯いてるヤツがいてさ、そいつに付き合ってやったんだよ」


「ああ、いるよなそういうやつ」


「わたしもその気持ちよく分からないでもない」いつの間にか卒業生の何人かがその話の輪に加わり、たけなわになっている。


「どういうことなんかさっぱり分からん。ただの現実逃避なんじゃないの?」


「人によるでしょ?」

「本当に人に使われるのが嫌で、自分で会社を興すやつもいるやん」


「でも、一度会社に入って社会を知ってからでも遅くはないんじゃないか?」


「いや~一度会社に入ったらなかなか抜けられないぞ」


「それくらいで会社抜けられないやつは最初から会社なんて興せないの」


「直樹は実家のコンビ二を継ぐんだろう?」


「いや、それこそ負けだよ。あんな親父のコンビ二継いだところで奴隷みたいに搾り取られて終わりだ」


「そうなん?」


「儲けのほとんどが、本社に持ってかれる」


「そんなもんなのか」


 直樹はテーブルの向い側の隅で珍しく佇むように、ぽつんと座っている凛を視界の隅に置きながら話しを続ける。

凛はとなりに座る三年生の小川糸の話を何も言わすに頷いて耳を傾けている。

糸は今、サークルの副代表を務めていて、小柄な体で小股で歩く様が、直樹はついテントウ虫を思い浮かべてしまいテン・トウコというあだ名をつけたら、即座に凛に叱られた。

糸は、サークル運営の相談ごとでも凛に話しているのだろうか。

 二次会の最中、直樹は、凛のことばかりが気になっていた。

   

               つづく

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