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鳥の示す予兆
老人は道端で鳥を発見した。鳥は羽から血を流し、苦しんでいる様子だ。老人は鳥を抱えて家まで帰り、介護してあげた。
数日が経ち、羽の傷が癒えた鳥は老人の腕に乗って外に出ると元気に羽ばたいていった。その日以降、鳥は老人の家の屋根に張り付くようになった。それだけではない。鳥は老人の道行く先にいつもいたのだ。
何だか不思議な鳥だな。老人はそんなことを思いながら過ごしていた。 とある朝、老人は行きつけの喫茶店に行くために家を出た。車に向かうと、ボンネットの右側に鳥の糞がついているのが見えた。何だか不吉だなと思いつつ、乗車して喫茶店に向かう。運転中、視界の悪い十字路に遭遇した。自分の道が優先であるため停車することなく行こうとしたが、何だか嫌な予感がしてブレーキを踏んだ。すると右側から車が勢いよく通り抜けていった。もし、あのまま出ていれば衝突は避けられなかっただろう。
今朝の糞は、鳥が自分に危険を知らせたのではないかと老人は思った。