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樹の巫女
私の在学する王華女学院には、中庭に大きな一本の樹が立っている。
校舎から校舎へと渡る際に通る回廊から、私はいつもその大きな樹を眺めていた。樹に大きな力を感じていたのだ。時たま、その樹の根元で一人の少女が眠っている。樹の周りには侵入禁止の張り紙がされているが、彼女は気にする素振りもなくそこで眠っているのだ。
由緒正しき王華女学院の生徒として、校則を破る生徒は許せない。
いつもと違って一人で回廊を歩いている時、いつも目にする少女を見つけた。私は人目を気にしながら中庭へと入る。校則違反の彼女と一緒のところを見られたくなかったのだ。
侵入禁止を告げる縄をくぐり、彼女の元へと歩み、注意しようとした。
しかし、「ここに来てはいけないよ」と不意に聞こえた声とともに私は意識を失った。次に目が覚めた時には中庭でなく保健室のベッドだった。
後に聞いた話だが、樹にいた生徒を私以外は見ていないようだった。




