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壁に塗られた赤い手形
「やっぱり、絵はアナログの方がいいわね」
キャンバスに描かれた絵を見ながら私は感想を呟いた。仕事としてのデジタル絵の休憩がてらとしてアナログで絵を描くのが私の日課だ。
視線はふとキャンバスの奥にある壁へと移る。そこには赤い手形が九つつけられていた。引っ越してから寝るたびに赤い手形は増え続けていた。
ここが幽霊物件かどうかそれは今日搭載した監視カメラで確かめる。
その日もいつものように夜に酒を飲んだ。姉から飲み過ぎ注意を受けているが、聞く耳は持たない。自分の体なのだから私の勝手だろ。
酔いが回ってきたところで気を失ったように寝入ると気づけば朝になっていた。壁を見ると案の定、手形が一つ増えている。
頭痛のため頭を抑えながら監視カメラを手に取り、部屋の様子を伺う。
結論、あの手形は私のものだった。酔っている際にパレットの赤いインクに手をつけ、壁を塗ったらしい。姉には幽霊物件と伝えておこう。




