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絶叫マシン『観覧車』
先月開園された都内の遊園地に家族みんなでやってきていた。
この遊園地には日本随一の高さを誇る観覧車がある。その高さは脅威の一五〇メートル。一周を約三〇分かけて回っていく。しかも、この観覧車のゴンドラは支える柱以外が全て透明な強化ガラスで作られている。椅子はなく、手すりを支えとして立ちながら三六〇度の景色を堪能する。
「おい、美香。大丈夫か?」
六歳の長男、弘人が乗りたいと言うことで観覧車に乗った俺たち。妻の文恵と俺は興味津々に景色を眺める弘人の姿に愛らしさを覚えながら、彼の手を握っていた。幸せな俺たちの空間をよそに後ろでは十四歳の長女、美香が両手両足を手すりにつけ、目を瞑っていた。
「だ、だ、大丈夫。ギャッーーーーーーーーーーーーーーーー」
俺の声に反応し、目を開けた美香は恐怖の雄叫びを上げる。だからやめとけと言ったのに。高い所が苦手な彼女にとっては絶叫マシンのようだ。




