25/122
水面のように
私は泳ぐのが大の苦手だ。
だから学校でのプールの時間はあまり好きではなかった。水に浸かり、奥まで歩く練習は平気だが、顔をつける練習となると怖くてできない。呼吸ができない場所というのは自分にとっては恐怖の場でしかないのだ。
最初のウォーミングアップが終わるとすぐに、私は端の方に座って水面を眺める。水面に反射した自分の顔が、波によってグニャグニャになっていく様は見ていて面白かった。それに、手を入れて上下させると輪っか状の波が広がっていく。まるで自分がプールを操っているような気になり、私は夢中で手を動かした。
すると突然、背中を勢いよく押された。無防備な状態だったため為されるがままプールへと落ちていった。水中に水飛沫が舞う。呼吸の仕方が分からず、私は体を無闇に動かした。やがて先生に無事助けられた。
現実は水面のように思うようには操れないみたいだ。




