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距離と綺麗は反比例
幼少期は山に住んでいた。山での夏は大変だ。
通学時間一時間ほどの学校を往復する毎日。上り坂や下り坂が多いため、たとえ自転車を使っても、体力の消耗は激しかった。
朝の小鳥の囀りや川のせせらぎは心地いいが、夏は蝉の鳴き声がそれらを全て打ち消してくる。それにあちこちにゴミが落ちている。
早くここから脱出したい。そう考えていた俺は一生懸命勉強し、東京の有名大学に合格して上京することとなった。大学ライフを堪能しようと思った俺はサークルに参加することに決めた。幼い頃から写真にハマっていたので、写真サークルに入った。写真サークルでは毎年夏休みに合宿があるらしい。今年は俺の住んでいた山の近くが合宿場だった。初めて外から自分の住んでいた地域を見た。あんなに嫌いだった夏の山は遠くから見るととても美しく、カメラ映えする光景だった。
どうやら、距離と綺麗は反比例するみたいだ。




