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ピエタ
今日の美術の時間は来週に行われるテストに向けた自習だ。
私は真面目に資料集に目を通す。事前情報としてピエタが出るらしい。
ピエタ。意味は哀れみ。聖母子像のうち「死んで十字架から降ろされたキリストを抱く母マリア」の彫刻や絵画などの作品のこと。
色々な作家がピエタを制作している。おそらく誰がどのピエタを作ったのかが問われるに違いない。
こうして見ると作家ごとに母マリアに対する人物像が違うのは面白い。母親にとって子の死というのはこの世で一番の恐怖であろう。何をも受け入れる聖母マリアがそれを受け入れられるのか、受け入れられないのか作家ごとに解釈が分かれる。それを見ているのは面白い。
「ピエタ作ってるやつ多すぎ。マジ、ピエンタだわ」「何それ、オモロ」
隣のギャルたちが冗談を言って笑っている。何が「マジ、ピエンタ」だ。馬鹿な奴らめ。記憶力の悪い彼女たちを私はピエタした。




