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百獣の王『ライオン』
「ねえ、お父さん。どうしてライオンは『百獣の王』って言うの?」
家族三人で動物園に行った。ライオンのいる場所に来たところで娘が旦那に尋ねる。看板に書かれた『百獣の王』が気になったみたいだ。
「きっと、百種の動物たちでトーナメント戦をして優勝したんだろうな」
旦那は知ったかぶりするように、頭の中ででっち上げた嘘をつく。
「へえー、その百種ってどんな動物がいたの?」
「えっ! それはね、猫、犬、虎、象とか色々だよ」
「ぜんぜん数が足りてないよ」
娘の詰問に旦那は慌てた様子で視界に入った動物を片っ端から言う。変なでっち上げをしたばかりに。可哀想な奴め。まあ、自業自得か。
「ところでトーナメントの順番ってどう決まったの? 何で戦うの?」
懸命に百種の動物を答える父に、娘は追撃するように質問する。
子供の好奇心はすごいな。私は微笑ましく二人の様子を見続けた。




