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不吉な壊れた腕時計
「はあ……」
いつもの三人で、行きつけのカフェで談話をしていると、律子が重いため息をついた。会った時から元気がなかったがどうしたのだろう。
「ねえ、聞いてよ。昨日さ、腕時計壊れて止まっちゃってさ。それで時間を見たら四時四四分四四秒なの。すごい不吉じゃない?」
そう言って、ヒビの入った時計をテーブルに置いた。針時計だが、針の時間帯を見ると確かに四時四四分四四秒だった。これは不吉だ。
「いいじゃん。四がたくさんあるってことは四が合わさって幸せだもの」
すると紗香が素敵な励ましの言葉を送る。当然と言わんばかりのクールな物言いに律子は「紗香っ!」と彼女を崇める動作を見せる。流石だ。
「それにしても、売れば二百万する代物だったのに、もったいないわね」
紗香はテーブルに置かれた腕時計をしみじみ見つめながら呟いた。
前言撤回。紗香はただのお金にがめついやつだった。




