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チェックメイト
A国とB国。隣同士である二つの国の王はよく二人でチェスを嗜んでいた。この日も暇を持て余した王は二人でチェスに勤しんでいた。しかし、この日は賑やかないつもと違って、宮内には緊張が走っていた。
「チェックメイト」
ビショップを持ち、相手のキングの元へと移動させる時、王はそう口にした。だが、それはチェスを持った王ではなく、頬に肘をつきながら番を待っていた王の口からだった。
自分の番でもないのに「チェックメイト」と口にするのは何事か。そう思いながら王は相手のキングの元へとビショップを近づけた。
刹那、発砲音が流れる。王は身体に受けた衝撃で地面に倒れた。自身から流れる血を見て、自分が撃たれたことを悟る。相手の王はいつも浮かべていた柔和な笑みではなく、不気味な笑みを浮かべていた。
「言っただろ。チェックメイトだと」




