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 冬の雪解けを目前に、アサヒは寝床から起きられなくなった。食事は使用人に頼んで食べさせてるが、日毎に食べる量も少なくなり、口も目も開かなくなってきた。


「おい、もうそろそろか?」

「……」

「長かったな。これでオレも自由になれる」

「……」

「オレにも少しだけ感覚がわかる。多分これだ。これがお前の命なんだろう」

「……」

「手ですっぽり握り込める感覚がある。かなり小さくなったんだな」

「……」

「じゃあな」


 最期の瞬間、少しだけアサヒの口角が上がった気がした。

 ぱきっ、と。歯車が壊れるような感覚がした。


 いつも味わってきたもんだ。

 でも、今までで一番軋みを感じて、生きてるって感じた。


 それを、壊した。


 使用人に事情を説明して、脈を取ってもらって、死亡を確認した。

 あっけない。実感も少ないが、暖かかった手のぬくもりは、もうなかった。

 使用人たちは、生前に残された遺書に沿ってすぐに行動を開始していた。


「すみません。場所をとってもよいですか?」

「あ、ああ」


 長らく一緒にいた使用人がこちらの顔色を見ながら尋ねてきたので、ずっと繋いでいた手を、離した。

 何も言葉が出てこないオレと違って、使用人たちはテキパキと情報共有をしながら処理をこなしていく。


 どうしても、その場にいられず外に出た。


 込み上げてくる何かを感じながら、気のせいだと思い込んだ。

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